葬送 第二部(上) (新潮文庫)
葬送 第二部(上) (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
圧巻はいきなり冒頭から現れる。プレイエル社のサロンでのショパンの演奏会の描写である。100ページにわたって展開されるそれは、ショパンのピアニズムの精髄を文章によって再現しようとの平野の挑戦であった。ショパンが「舟歌」の最後を楽譜通りにフォルテではなく、ピアニッシモで弾いたとのエピソードは、はたして史実通りであったのか、はたまた平野の小説的創作であったのか。また、この巻では、ショパンとドラクロワの二人が、ジャンルも芸術家としてのタイプも異にしながら、共に彼らの命を削って創作していたとの壮絶な記述が目を引く。
2016/07/19
のぶ
第二部は冒頭から約100ページに及ぶショパンのコンサートの場面から始まる。活字からピアノの響きが聴こえてくるようなあでやかな文章。今までショパンを物語の前面に出さなかったのは、作者の計算だったのだろう。音楽に酔わされて先に進む。やがてドラクロワが中心の話に移り「民衆を導く自由の女神」他、絵画を通して語られる芸術論も深い。やがて社会が動き出し勃発するフランス革命。ショパンは弱る体で旅を続け演奏会を開く。最後近くで演奏されるソナタ「葬送」が先の予感を感じさせた。最終巻に入ります。
2016/06/16
優希
二月革命が勃発したことで、天才は孤独へと結びつくのですね。時代は大きく動き始め、ショパンの運命も動き始めたと言えるでしょう。
2022/12/14
かみぶくろ
3.8/5.0 冒頭からショパンの演奏会の華やかで美しい描写に圧倒される。音楽を言葉でここまで表現できるのかと驚き。ドラクロワの語る天才論とそれゆえの孤独も印象的でしたね。作者も同じような想いを抱いてるんですかね。二月革命を巡る登場人物たちの人間らしい反応もなんだか現実味があって面白かったですね。終盤にいくにつれてどんどん病み衰えていくショパンが不憫・・。
2024/09/06
崩紫サロメ
サンドと別れた後のショパン。冒頭からの演奏会のシーンが圧倒的。平野啓一郎はこういう魂の昂ぶりを描くのが上手いなあ、と改めて。二月革命という激動の時代の中で、ショパン、ドラクロワ、サンド、ソランジュら、それぞれの葛藤や憂愁が立体的に交錯する。個人的には、ショパンとミツキェヴィッチのポーランドに対する想いのズレなども面白かった。確か、本書が刊行された頃、ミツキェヴィッチの『パン・タデウシュ』が映画化されたな……などと懐かしく思いだした。
2020/10/27
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