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此処彼処 (新潮文庫)

此処彼処 (新潮文庫)

此処彼処 (新潮文庫)

作家
川上弘美
出版社
新潮社
発売日
2009-08-28
ISBN
9784101292397
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此処彼処 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

今回は場所を軸としたエッセイ。いつもの空とぼけたような川上節は幾分薄い。あとがきを読むと、日本経済新聞に連載されていたらしい。はは~ん、このせいだったのかと思う。川上さんもちょっと緊張していたのだろうか。タイトルだって『此処彼処』などと、いつもよりもぐっと硬めだし。ただ趣きは違うが、いいエッセイだし彼女独自のもの。例えば、家出中にたった1枚しかないパンツを盗まれて「すごく心細い。一方で、今わたしパンツはいてないんだよという、妙な自慢の心もぽっちりある」と書く。この最後の「ぽっちり」が素人には書けないのだ。

2013/02/05

keroppi

居酒屋「BEETLE」で日本酒「かぶとむし」を飲んだとつぶやいたら、読友さんが勧めてくれた本。たしかに、フォルクスワーゲン・ビートルの話があるし、居酒屋の話も多い。色んな場所で物語る「居場所」の話。6歳の頃、ボストンの美術館でキリスト像に一目惚れした話や、新婚旅行でマダガスカルに1週間置き去りにされた話、等々。川上さんが、何かしら関わりを持った「居場所」。「かぶとむし」から、この本を連想した読友さんの感性も、川上さんぽいと思った。私にとっても、いい感じで居酒屋「BEETLE」が「居場所」になった。

2019/06/27

めしいらず

文庫版で再読。著者が人生の折々に過ごした場所。そこで出会った人や過ごした時間の記憶をめぐるエッセイ。「大切な時が、大切だったと知るのは、いつだってその時が遠く過ぎ去ってからだ」という言葉がすーっと身に沁み入るのは、こちらもそれなりに齢を重ねたからか。その折々、素直になれなかったり、愚直だったりした自分を思い返す今、青臭さ、カッコ悪さ、情けなさに、悲しみが加わって胸を締め付ける。人生の嬉しいこと、悲しいことも引っくるめて、今、この場所にいて、生きている。ただそのことを感謝できる自分であれたら。

2013/12/26

ケイ

川上さんの本を一作読んだだけで、間違えて二作目にエッセイを選んでしまった。感情移入ができなく少し退屈。おそらく、無難で優等生的な感じが、しをんさんとか辛酸なめ子さん、春樹さんあたりのピリリと山椒の利いたような感じがなかったからで、こういうタイプのエッセイが好きな方はおられるでしょう。お説教のお話だけは、非常にうなずいて読めました。こちらが100%正しいって信じているときでも、説教している姿は他人には見苦しい聞き苦しいものだと改めて思いました。

2014/04/20

あじ

老巧な文筆家でありながら、老化知らずの感性を持ち続ける川上弘美。“自分に属すると決めた場所”を綴るこのエッセイは、キテレツ極まりない川上分子が此処彼処(ここかしこ)で瞬く。なんですか「怖い銀座の範囲」って。そんなところに、くっっーときちゃうんですよね、私。

2018/05/29

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