思い出トランプ (新潮文庫)
思い出トランプ (新潮文庫) / 感想・レビュー
さてさて
『浮気は今までにも覚えがあるが、部下とこうなったのは始めてである』。1980年に第83回直木賞を受賞した3つの短編を含む13の短編が収録されたこの作品。そこには1980年という時代の空気感が自然と醸し出される物語の姿がありました。さまざまな場面設定の物語に人の息吹を感じるこの作品。そんな登場人物たちの思いが今の世を生きる我々と変わらない、いつの世も変わらぬ人の普遍的な感情を綴るこの作品。実に累計200万部を売り上げたという物語の中に、40年前にこの作品を手にした人たちの思いを感じもする、そんな作品でした。
2024/10/02
ehirano1
「犬小屋」について。ホンワカした話と思いきや、終盤に斜め上の展開で暗転しますが読後感は決して悪くはなく、ノスタルジックな思いでエンディングを迎えます。「想い」は「重い」のでなかなか時間が掛かるものですね。
2023/07/02
ykmmr (^_^)
向田さん初読。『思い出トランプ』と言う、綺麗&ハッピーな中身を連想させるが、実は中身はダーク。人間の醜さ・儚さ・正直さ・ダークさを描いているのだが、その内容は重層で、人間の闇・らしさそのものなのに、それを颯爽とささっと、ある意味爽やかに書いていて、中々読みやすい。ストーリーの作り方も上手く、色々な展開が楽しめる。人間は、『誠実』に生きようとしているが、実は何処か『正直』にも生きているんだよね。まあ、時代が『昭和』なのは仕方ない。その時代に書かれたし。私を含めて、『昭和』の生活をあまり知らない人もいるし。
2022/01/20
kinkin
携帯もネットもなかった時代、でもそれなりに幸せだった昭和を丁寧に切り取った短編の数々は、何度でも読み返すことができる。
2013/02/07
masa@レビューお休み中
人生はまるでトランプのようだ。劇的な大逆転があったり、手札通りの手堅い人生があったり、引いてしまったジョーカーを手放せずにいたりすることがある。向田邦子の鋭利で怜悧な人間の機微を描いた13篇の物語は、読むほどにひたひたと怖さが募っていく。脳卒中で倒れた宅二と、その世話をする妻の厚子の一日を描いた『かわうそ』。社長である庄治が、就職の面接に来たトヨ子にマンションをあてがった様子を描いた『だらだら坂』。どの物語も不穏な出だしではじまり、不穏な状態のまま収束していく。人生とは所詮そんなものといわんばかりに…。
2015/05/30
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