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河岸忘日抄 (新潮文庫)

河岸忘日抄 (新潮文庫)

河岸忘日抄 (新潮文庫)

作家
堀江敏幸
出版社
新潮社
発売日
2008-04-25
ISBN
9784101294735
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河岸忘日抄 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

この作品は、『雪沼とその周辺』で受けた印象と、またタイトルから想像していたものとは随分と違った内容だった。河岸に係留された舟を住居とする「彼」の視点で、淡々と日常(とはいうものの、通常のそれとは違って、旅の中にあるような一種の非日常)や思索が語られていくのだが、ある意味ではかなり難解な小説だ。「彼」が「私」であったなら、これは小説ではなく、エッセイとして読まれてしまうかもしれない危うさがそこにはあるからだ。

2012/07/14

KAZOO

このような小説を時たま読むのもいいと感じています。パリの川岸にある船にすんでいる感じが読んでいてもしてきます。筋がはっきりとあるわけではないのですがそれをうまい文章で引き込ませてくれます。ページにみっちりと書かれた文章をゆっくり読むのもいいと思いました。

2015/05/27

コットン

フランスで繋留された船に住むためらい続ける日本人男性とその大家や郵便配達人の会話が捉え処がないのに示唆に富んでいる。そしてそのためらい具合も次のように凄い:「ためらいの専門家を求める企業があれば、彼はすぐにでも採用されるに違いない。ためらう事の贅沢について彼はしぶとく考えつづけている。…ためらいとは、二者択一、三者択一を甘んじて受け入れ、なお体に深く蓄積する疲労感のようなものだ。…ためらうことの贅沢とは、目の前の道を選ぶための小さな決断の総体を受け入れることに他ならないのである。」と、究極のためらい!!!

2017/02/26

kana

河岸(川の近く)の一室にひきこもり、時々川沿いを散歩する最近の生活に相通じるものがあるのではと読み始めたのですが、まさに、でした。舞台はフランスのとある街の河岸に係留された船の上。そこで厭世観たっぷりに暮らす日本人男性の思索の日々が上質な文体で綴られるエッセイのような小説です。クレープを焼いたり、レコードを聴いたり、知人に手紙を書いたり。私も異国の船の上で生活しているんだと妄想してみたり、孤独や悲しみや人生の目的などについての示唆に富む言葉に考えさせられたり、至福の読書時間を過ごすことができました。

2020/05/27

chanvesa

ブッツァーティやチェーホフの短編を鍵にして、他者との関係や寛容であることについて、思考をめぐらし、そして語り合っていく。この時間の流れと思案が魅力的である。「他人の発言にたいして『わかる』と意思表示をするのは、ある意味で究極の覚悟を必要とする行為であり、まちがっても寛容さのあらわれではない」(334頁)という言葉は重い。寛容であることの負担は考慮しなくてはいけない。トカゲの切れた尻尾と生えてきた尻尾のどちらがほんとうかを考えること自体が「ほんとう」という妹の言葉(283頁)がさらに突き詰められている。

2017/01/09

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