天涯の船〈下〉 (新潮文庫)
天涯の船〈下〉 (新潮文庫) / 感想・レビュー
chimako
行き行けて重ねて行き行く 運命のいたずらと言うには壮大過ぎるミサオの生涯。何も知らず何も知らせれず渡った大平洋。恋われ請われて嫁いだ欧州。そこでの毎日は夢でもあり牢獄でもあり。やがて出会う強気の娘は何と妹の忘れ形見。どこそこに運命の鍵は用意され扉を開ける度に違う世界が現れる。身を焦がすような恋は一生。恋の成就はその終わり。燃え立つような熱い想いなど無縁の世界の出来事だと思いつつ、光次郎とミサオの逢瀬に愛情と言う名の身勝手と至福を感じずにはいられなかった。コレクションの飛散はいかにも残念。……続く
2016/02/08
goro@80.7
熱い想いとともにまた読了となりました。激動の時代を身代わりとして生きなければならなかったミサオとアメリカへ渡る船の中で出逢った光次郎。子爵夫人と造船王となってもお互いの気持ちを隠して、人生はうたかたと悟った時には残された時間は少ない。わたしたちは二隻の舟~ひとつずつのそしてひとつの~中島みゆき「二隻の舟」がずっと頭の中でかかっておりました。つべこべ言わず「読め!」の物語です。 マルガレータやっぱりお逢いしたかったです。
2019/06/19
ミカママ
これは何というか、一大抒情詩のような。ミサオと光次郎が結ばれるのか、結ばれないのか!その一点だけでもぐいぐい読めました。へーこれ、児玉清さんが絶賛してたんだ。ミサオが送った壮絶な人生。ある程度実話であってほしいな、と思ったのだけど、それは少し欲張りすぎだったようです。
2013/05/13
James Hayashi
秀作。松方コレクション(国立西洋美術館の元となったもの)の松方氏の実話に虚構を組み合わせ、さらに美術、政治、経済、歴史など組み合わせたラブストーリーは良く練られ厚みのある作品。相思相愛であるが愛しあえない仲であったが、時間を育み時を迎え熟成した愛を語り合う二人。いや、恋愛モノと読むより蓄えた私財を散逸せず、国のためを思い西洋画を買い集めた光次郎に男気を感じた。また、男中心の近代に強く欧州で活躍されたミサオにも敬服した。解説で児玉清も絶賛しているが、これは良い作品に仕上がっている。「お家さん」も読まなければ
2016/03/01
なおみ703♪
光次郎の生き様と鹿児島弁の語り口に吸い込まれるように一気読みした。彼は『海賊と呼ばれた男』にも登場したような、決断早く、行動力あふれ、部下にも思いやりがある実業家。そして私利私欲がない。一方、好きな女性に対しては無骨で純粋。想いをぶつけるためにどれだけ遠回りしただろうか。船のアクセサリーが物語のキーワードになり、歩んだ道と想いが凝縮されているている。当然小説なのでどんなに美しく互いの愛を象徴するものなのか見えず、私の想像だけが膨らむ…。なぜ、あまり知られていない作品なのか不思議。まずはあとがき読んでみて!
2016/05/01
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