お家さん(下) (新潮文庫)
お家さん(下) (新潮文庫) / 感想・レビュー
佐々陽太朗(K.Tsubota)
今や伝説となった巨大総合商社・鈴木商店の興隆と崩壊。巨大なものが崩壊する様には悲しみに似たやるせなさが伴う。それはある意味「美」である。無から様々な事業を興し、どんどん巨大化しやがて自分ではコントロールできないほど巨大化した瞬間に一気に瓦解する。そこに崩れゆくものの美しさがある。そしてそれは人々の記憶に残り、語り継がれ伝説となる。目には見えないがそれは鈴木商店のDNAであろう。現在の世界経済の中にはそのDNAが脈々と受け継がれている。鈴木商店は歴史の表舞台から消えることによって永遠を獲得したと云える。
2013/09/20
キムチ
今から思えば、結構に暗い時代‥だが語り口のせいか、活き活き、はつらつと展開して行く。台湾へと手を広げて神戸から飛躍する鈴木商店・・間じかに迫る関東大震災(今だから知っているとはいえ)語ること無く死去した父の姿が目に浮かぶ・・玉岡さんの作品を読みつつ、祖先の生きた時間の体験をなぞる時間の読書。世界(独仏米英他)を今日俯瞰すると、日本の狭隘な感覚を今さらながら思う。家族経営の限界、そして視野狭窄の展望。人間ってそんなものなのだなと思いつつも若い人に読んでほしい「学問ではない学び」が非常にあった。
2015/06/30
チヒロール
上巻同様、読み応えが確かな、歴史大河であった。鈴木商店が総合商社として頂点を極めた足取りや、焼き討ち事件、衰退していく様子が分かりやすく理解できた。たまきと田川さんの悲恋、拓海さんとの結婚も興味深いところ。 身近な山と海に囲まれた神戸の街並も話とマッチしている。
2014/07/17
Willie the Wildcat
「鈴木商店」の結末とは異なるさわやかさ。「お家さん」の真髄とは何だろう・・・。ぶれない軸で人をとことん信じる、か・・・。それが「珠喜、田川、拓海」、そして「およねとお千」の人間関係にも現れている気がする。一方、ビジネスは”結果”が重要。敢えて言うのであれば、”近代化”の波に乗れなかったのかもしれない。しかしながら、ビジネスのみならず日本国の礎を築くのに果たしたその役割に敬意を払うべきと考える。無論、現在においてもトップノッチでしのぎを削る旧系列会社が多々存在していることは、納得感もあり、驚きでもある。
2012/04/23
ねこまんま
一商店から日本を支える大企業となった鈴木商店の栄華と没落。諸行無常は世の理。時代とともに事業の拡大とともに、世代による新旧の軋轢を克服できなかったのが残念。この時代、女性のトップなんて他になかっただろうし、女目線で書かれているからか物語として楽しく読める。幾度も「時代だなあ」と唸りながら読了。鈴木商店の存在自体知らなかったので展開が新鮮だったのもあるけれどこれはお勧めできる1冊です。
2015/11/16
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