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潤一 (新潮文庫)

潤一 (新潮文庫)

潤一 (新潮文庫)

作家
井上荒野
出版社
新潮社
発売日
2006-11-28
ISBN
9784101302515
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潤一 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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鉄之助

潤一、この名前からイメージする専一に潤す男…。その対極にいるような男だった。14歳から62歳の女性、9人とかかわりながら決して深入りしない。「漂うように生きる」潤一だが、なぜか気になって仕方ない彼。登場シーンが、秀逸だった。「藁(わら)色の髪。まっピンクのTシャツ、ぼろぼろのジーンズ。いかにもやさぐれた風体をしていたが、顔だけが奇妙に真面目だった。~ 濃い匂いをたてる南国の果実を連想させた」。最後まで気にかかりながら、実在感が薄い、不思議な連作短編小説だ。

2024/08/13

ケンイチミズバ

人生初めてのエロチックな出来事は、中二の夏でした。部活の終わり、罰当番を言い渡されひとり理科室にいた。夕立でびしょ濡れのヨーコが入って来て抱きつかれた。キスをした。鼻息が荒かった。濡れた髪から滴る水滴が私の頬にも流れ、太ももにはさまれた太ももが気持ちよかった。時々教室で目が合って野性動物みたいな、アイコンタクトがあったこと、今でも覚えている。潤一のどこかは私だなと思いながら読んだ。荒野さんの描写がとてもいい。女性の中にある女を引っ張り出すジーンが爽やかにむき出しな潤一に彼女たちの立場も年齢の隔たりも無力。

2019/06/24

おくちゃん🍎柳緑花紅

私が潤一に会ったのは土曜の午後の自室だった。しかし、全く惹かれない。どうしたことだろう?川上弘美さんのニシノユキヒコ〉柚月麻子さんの伊藤くん〉潤一の順かなぁ。最後に本人の回想シーンがあるけれど本人さえも自分自身を捕まえていないのだから私に掴み所がない男だなぁと思われても仕方があるまい。そこのところが何とも切ないとも言えるけれど。

2017/10/01

ミカママ

おいおいこれ、構成も内容も「ニシノユキヒコ」と同じだよね。ググってみたところ、両作品とも初出は2003年なので、どっちがマネっこ(偶然かもだが)したのかわからないけど。なんかなぁ、こういうだらしない主人公も、それに付け入られる女性たちも、私的にダメダメ〜〜。感情移入できませんでした。これのどこが恋愛小説集なのかわからんし、この作品に「島清恋愛文学賞」ってのもどうなのよ?でした。

2015/02/16

masa

清潔なのに不快なものと不潔なのに不快じゃないものがある。潤一の存在は後者だ。それによりこの物語は、異性を救う竿師のような、上京したての童貞も鼻白む童話から脱け出すことに成功している。潤一の内面は限りなく無垢だが、それを包む外面は徐々に穢れてゆく。これは彼の無色透明さが、触れ合う相手も自覚しないまま無意識下に秘めた色を正しく引き出し、最終的に染まってしまうせいではないだろうか。穢れを引き受けているのだ。だから相手は潤一が通る前後で何も変化がないようでいて、憑き物が落ちている。気がつけば潤一はどこにもいない。

2019/10/26

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