エスケイプ/アブセント (新潮文庫)
エスケイプ/アブセント (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
職業的革命家をドロップアウトした正臣、偽神父のバンジャマン。彼らはともに、いわばかけがえのない青春期を失ってしまった。そして、過去における継続的な挫折のゆえに将来への展望もなきに等しい。小説のアイディアとしてはわからなくもないが、やや作為的に過ぎるようにも思う。タイトルの所以となったジョディ・ハリスとロバート・クインの「エスケイプ」も職革の過去には違和感が否めない。一方の「アブセント」は、もう少し自然だが、その分インパクトには幾分か欠けるだろう。小説のテーマは「喪失」であり、読後には一抹の寂寥感が残る。
2014/04/19
しんごろ
革命運動から脱落した男性の話!最初は入りこめませんでした。うん…、放浪記?旅行記?と頭が???になっていくうちに、神父さん登場!一気にのめり込みましたね(^^)ユーモアがあり、楽しく読めました。読んでいて文章表現から、『オツベルと象』をなぜか頭の中に現れたのは…俺だけ(笑)読みながら、再読時のBGMはセックス・ピストルズでいきますか(^^;)
2016/05/24
新地学@児童書病発動中
元左翼の男が主人公の2編。軽妙さの中に重さが隠されていると言う絲山さんらしい小説。共産主義や革命には全く共感できないので、左翼運動に幻滅している江崎のうらぶれ心情はすうっと胸の中に入ってきた。ただ、神父の描き方には疑問を感じた。カトリック教会は厳格なところなので、にせの神父の活動を放置することはないと思う。政治も宗教も頼りにならない現代社会の空虚さを、皮膚感覚で描いて江崎という男の生き様を凝縮して表現したところが、この小説の素晴らしさだと思う。
2015/02/05
masa
そうか不在を信じさせるから神様は普遍なのか。ずるいよね。もう失敗なんてしない。不在だもの。だけど生きている者たちによって美化され続ける。神様は、生きている間はきっと僕らと似たり寄ったりの平凡な欠陥品で、不在になることで完成するんだね。神様を信じる人は存在しているから欠陥を抱えているわけで、ますます都合よく信じたい理想の神様を創り上げてのめりこんでしまう。ほんの少しズラせば、全部が茶番だってわかっちゃいるんだろうけどさ。君も、我に返ったところでどうしようもないならエスケイプすればいい。僕の中に不在を残して。
2022/03/26
はらぺこ
今まで読んだ絲山作品の中では1番読み易かったかも。舞台が京都で想像し易かったからかも(観光しかした事ないけど)。主人公が同性愛者(両刀使い?)って設定は要るか?別に同性愛に偏見は無い積もりやけど男が抱き合ってるのを想像するのは嫌や・・・。女同士が抱き合うなら読めると思うし、むしろ率先して読みたいし実際に見てみたい。 『アブセント』は要らんと思う。
2010/11/27
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