下天を謀る(下) (新潮文庫)
下天を謀る(下) (新潮文庫) / 感想・レビュー
yoshida
豊臣秀長より為政者としての薫陶を受け、徳川家康と共に大平の世を築いた、新しい藤堂高虎の姿が描かれています。今まで司馬遼太郎氏の「関ヶ原」や「城塞」にて、物語として紡いできた俗物としての藤堂高虎とは一線を画している。批判を覚悟して記すが司馬遼太郎氏の作品は引き込まれる「物語」であり、史書とは言い難い部分があると思います。私は「物語」として司馬遼太郎氏の作品のエンターテイメント性を楽しんでいます。対極的にあるのが吉村昭氏の作品と思います。本作品も今までの藤堂高虎の姿と一線を画す斬新な作品として楽しめました。
2016/05/15
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
後半は秀長、秀吉亡き後。関ヶ原の合戦を経て大阪冬の陣、夏の陣へ。単に世の中の情勢を読むのが上手く、機を見るに敏な人物であるが為に出世した人物だと思っていたのですが、ちょっと見る目が変わりました。なるほどね、家康の懐刀としての活躍ぶり。家康の信頼が厚いのもわかります。外様であるのに何故譜代大名をしのぐ程の扱いを受けていたのか腑に落ちました。下天に生きる全ての人々が幸せになるように謀らねばならないと覚悟を決め行動した高虎。この武将の新たな面を発見した物語でした。★★★★
2015/11/06
アイゼナハ@灯れ松明の火
秀吉没後は徳川の天下。そう見通していた大名は多かったのだろうけど,実際に天下を獲らせるために積極的に活動した武将としては,徳川家中以外では高虎が随一ということなんだろうね。御家大事・立身出世のためというより,早く天下を安定させたいという信念に基づいて…というのはあり得る話と思いつつ,個人的には高虎の実力を正確に見抜いて重用した家康の負託に応えるべく,働かされちゃったのではないかと思ったりもしています。誰しも自分の実力を認めてくれる人と働きたいものね。しかし,見事な働きぶりであります。
2013/05/19
日々是ご機嫌
大和郡山100万石取り潰し騒動以来の高虎と家康の縁の深さを軸に描く。クライマックスは、大坂夏の陣。先陣として、数多くの一門・重臣を失い呆然自失とする高虎の姿は、涙を禁じ得ない。そして自ら敵陣に突っ込む姿は、彼の若かりしときの猛者ぶりを彷彿とさせる。私が藤堂高虎に興味を持ったのは、本書あとがきにもある「自己変革の名人」であるところである。秀長に見出され、豪勇無双の武者から、領国経営ができる大名に、そして、家康のブレーンに自己成長・自己変革していく姿は今後の人生の道標になるであろう、もっと知りたい人物である。
2024/03/09
柔
関ヶ原から徳川幕府、大阪冬、夏の陣へと続く。戦、城作り、交渉と家康にとってどれだけ大きな存在であったかが窺える。家康の死際では宗派が違う為に、来世で行く所が違うとなれば「今日より天台宗に改宗いたしまする」という高虎の家康に対する信念も素晴らしい。「命を捨ててかかる男でなければ、信用するに足りぬ。その覚悟を、そちは身を持って示してくれた」家康の言葉からも分かる様に、何度も君主を変えたマイナスイメージがあるらしいが、そんな事はない。芯の通った男であった。
2020/06/22
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