日本人はどう住まうべきか? (新潮文庫)
日本人はどう住まうべきか? (新潮文庫) / 感想・レビュー
やすらぎ
人間は都市を今のようにしたかったのか。本当に住みやすいのか。地形を活かした豊かな住空間を持っていたのに、不動産価値を高めるために街に付加価値をつけた結果が今である。不自然で無機質な中でも人は適応しているけど、もっと自然で個性的な住まいが生まれないものか。見上げるのは空でも雲でもなく高層ビル。人間の頭が作り出した建築には限界がある。ごちゃごちゃした路地の楽しさはどうしても作れない。人間は何処にだって住める。窓外の懐かしい風景に和み、清んだ空気に誘われる。そんな住まいのあり方を考え直す本。養老氏と隈氏の対話。
2019/11/17
りー
本当に話したい相手と話したい内容を話している、と感じる対談。2012年刊だから、今から10年前。東日本大震災の後の建築や都市計画が話題になっているが、関連付けてもっと深い人間の感覚や生き物の体の構造と建築との結び付きを考えていてとても興味深かった。で、「どう住まうべきか」の結論が「どこでも住めますよ」っていうのに、くすっと笑った。コンクリートに頼る建築がどこから来ているのかなんて考えたことも無かったので本当に勉強になった。エネルギーをこんなに必要とするから石油から抜け出せないんだ、という逆の考え方。
2022/07/18
nbhd
どのページも、いろいろと深い。カトリック系(イエズス会!)の栄光学園の先輩後輩にあたる解剖学者と建築家の対談。2人に通底しているのは、様々な事態に応じた「だましだましの思想」。「だましだまし」には譲歩とか、その場しのぎといった否定的な響きがあるけど、絶対性の脆弱さが、様々な問題をひきおこしている現状、前向きな「だましだまし」のほうがはるかに有効、だとする。2人の「だましだまし」の起源は、ニッポンにやってきて、信念をもちながら現場対応してきたイエズス会にあるのかも、としめくくる隈さんのあとがきが圧巻。
2017/05/12
ガミ
解剖学者の養老さんと建築家の隈さんによる「現場主義」「だましだまし」「ともだおれ」の3つの言葉をキーワードに、現代人の住まいのあり方について論じた対談集です。災害によっておこった建築の問題の根本的な原因を、日本人特有の欠点や教育の在り方(文理を分けていること)にあるとしながら論じられているため、斬新な2人の見解がとても面白いです。P78から語られる「サラリーマン化」は、建築の無難な均一化で安全性を重んじてはいるものの、面白みに欠ける欠点があるという論点が、特に興味深い内容でした。
2016/02/21
ほし
なんでしょう、ちょっと高尚な居酒屋談義、という雰囲気の対談です。色んなテーマについて語られているのですが、内容は散漫で、説得力にも欠けています。ただ、おじさんたちが好き勝手に意見を言い合い、社会をボヤいている様子は、それはそれで面白みがあるので、読んでいて退屈なわけではありません。例えるなら、上司二人に飲みに連れられた新入社員のような感じでしょうか…。 個人的に面白かったのは、モンゴルのパオ族にとって、家の中が公共空間で、プライバシーは外にあるという話。そんな社会もあるんだなぁと。
2019/08/11
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