信長―あるいは戴冠せるアンドロギュヌス (新潮文庫)
信長―あるいは戴冠せるアンドロギュヌス (新潮文庫) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
原点回帰とも言える最新作、『かがやく月の宮』を読んでから無性に読み返したくなり、再読。「両性具有としての信長」を根幹にし、呪殺や幻術により、猛将を摘み取り、黙示録をベースにした虐殺やキリストとユダの関係としての信長と光秀を妖艶に描き出す。それは、長き時を経て大陸を渡り、その地の土俗に混じりつつも唐草のように絡み合う和洋折衷のオカルトや神話、知識を積み立て、煌びやかな伽藍として構築したことを意味する。空は漠にして如何に有とならんや。総見寺の手を取れなかったアルトーの姿が信長の手を取れなかった秀吉の姿に被る。
2014/04/26
ntahima
アンドロギュヌス、異端の太陽王ヘリオガバルス、バール神殿、グノーシス、キリスト教の蔓延により葬り去られた古代オリエントの神々バフィメット、バール・ゼブブ(蝿の王)・・・ 書名が「信長」でなければ、澁澤龍彦の書かと思われる数々のガジェットに彩られた戦国絵巻。千三百年の時を越えて交わる異端の肖像。伝奇・反史は正史があってこそ怪しく輝くもの。司馬遼太郎の「国盗り物語」等、歴史小説を先に読むことを勧める。ヘリオガバルスは澁澤龍彦「異端の肖像」に詳しい。著者には豊臣秀吉をテーマにした「聚楽―太閤の錬金術」あり。
2010/07/25
流言
歴史ファンタジーをそう繋げるのか。自分に知識が足りないこともあって、作中で述べられた共通点は積み重ねられれば積み重ねられるほど強弁の印象を受けてしまったが、オカルトの域に留まっていること自体に意味があった……という理解でいいのだろうか。作中のアルトーは実在の人物であり著書『ヘリオガバルス あるいは戴冠せるアナーキスト』が前提になっていることぐらいは知っていればまた違った読み方もできそうだったが、残念であった。瞬間最大風速を感じたのは桶狭間の戦い。信長が美女であることがカリスマに繋がるという解釈は興味深い。
2016/06/16
GaGa
壮大な発想で書かれた伝奇小説。信長が両性具有者のアンドロギュヌスであること、そして数々の武将を呪殺し、天下へと近づいていく。それをフランスの詩人アルトーは総見寺という日本人から教えられる。そしてそれはナチスのヒトラーとつながっていき…伝奇小説好きなら一読の価値あり。難解な内容も文章が流れるようで、非常に読みやすくまた読み応えあり。
2010/08/15
藤月はな(灯れ松明の火)
蘊蓄がたくさん、詰まった読み応えありの本でした。「信長の行動にはそんな意味があったのか!」と目から鱗が落ちっぱなし(笑)20世紀最大の歴史上の人物から最後のまさかのどんでん返しまで驚きでもう、言葉になりませんっ!
2009/08/26
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