ハイドラ (新潮文庫)
ハイドラ (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
かつて『蛇にピアス』で衝撃的なデビューをはたした金原ひとみ。あれほどに特異な世界やキャラクターではないまでも、その後も彼女は金原ひとみにしか書けない小説を書き続けている。本書もまさにそうした1冊。ここで描かれるのは、東京の、いわば文化的先端にいるクリエイティヴな職業にたずさわる人たちである。登場人物8人のすべてが、いわゆるギョウカイ人であり、我々読者はモデルの早希を中核として彼らの世界を垣間見ることになる。恋愛物語でもあるのだが、その恋愛はそうとうに異質であり、不毛感さえ漂いつつ終局を迎えるのである。
2022/02/23
おしゃべりメガネ
芥川賞作家金原さんの『蛇にピアス』『アッシュベイビー』以来の3作品目で、およらく7年ぶりくらいに読んだと思います。そんなに金原さん作品を読んでいないので、なんとも言えませんが、『蛇に~』からも十二分に伝わるようにかなり独特な作風、世界観の作家さんだと思っています。今作も思っていたとおりの雰囲気で、ガリガリの芥川オーラを感じます。芥川賞作家さんの作品は、他の受賞作家さんのレビューにも書いてますが、多くの作家さん、そして作品は内容云々よりも雰囲気を味わうべきなんだろうなぁと。当然インパクトは強烈な作品でした。
2015/12/10
ゆいまある
体重35キロ、モデル。過食嘔吐ではなく、口に入れたものを噛んで吐くチューイングという方法を取る。これ、結構珍しい。摂食障害は人と一緒に食事が取れない。後で吐けないこのタイプは尚。なので絵に書いたように健康で真っ直ぐな人間とは、どんなに憧れても一緒にはいられない。ペンギンが空を飛ぶぐらい無理。健康な人間は食べろって言う。だが摂食障害はそもそも健康に生きていく自信がない。健康になったら世の中に組み込まれ、人から批判される。自分の逃げ場を潰すように、それを書いた金原ひとみ。泣きながら書いたのではないか。凄いわ。
2022/03/21
優希
歪んだ世界が美しく、同時に何かを抉り出しているような感じがします。確実に発狂し、壊れていく恋愛関係。歪みのない愛を求めれば求めるほど傷ついていく女性。その心が痛みとして突き刺さりました。普通の恋人ではなく歪みの中にあり、異常を正常と受け止めてしまうのが辛いですね。自分がわからなくなる様子に、愛の怖さというのを見ずにはいられませんでした。
2016/12/13
青蓮
金原ひとみさんの作品には必ず「病み」(もしくは「闇」)がある。それを的確に描いてるからこそ読んでて嫌悪感がわいてくるんだと思います。私も以前、拒食症だったので早希のチューイングに昔の自分を見てるような感じがしました。「一足す一はゼロみたいな、歪んだ図式で世界を捉えていた人が、常識的な世界に戻るのは難しいと思います」というリツと早希は似た者同士なんだろう。松本と出会っても結局、新崎の元に戻る早希は「今の自分」を手離したくないからなんだと感じました。新崎との関係は恋愛というより共依存なのかなと。
2015/05/23
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