春のオルガン (新潮文庫)
春のオルガン (新潮文庫) / 感想・レビュー
SJW
小学校を卒業した春休み、トモミやその周りには様々な厄介事が起こり、悪夢にうなされたりと気が滅入る展開で始まる。しかし、たくさんのすて猫の世話をする猫おばさんに心を許すようになり、一緒に猫の世話をするうちに心に余裕が出てくる。それに伴い周りの大人達を許せるようになるという子供から青少年に変わっていく成長が描かれている。湯本さんはこの作品でも死について書かれているが、悲しませるためでもなく、現実に直視すべき死が描かれている。自分は今回、心臓疾患を煩い長寿の自信がなくなり、万が一の事を考えると怖い(続く)
2018/07/09
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
小学校を卒業した春休み、私は弟のテツと川原に放置されたバスで眠った(巻末より)。子どもでいて、優しい世界でずっとたゆたっていれたらいいのに。そこで永遠にいれないことへの気づき、不安。大人の事情ももう気づかないでいることはできないし、自分の中の残酷さもわかってしまった。それでもエンジェルに憧れる。悪意に正当な態度で臨むことはとても難しいけれど、そうあることはむしろ自分の為の財産になるのだろう。選択を誤らず、「かいじゅう」にならずにすんだトモミに安堵するし、その選択を尊敬する。
2019/03/28
HIRO1970
⭐️⭐️⭐️⭐️湯本さんは3冊目です。題名に全て季節が入ってました。夏、秋、そして本作が春。我々は生老病死の4ステージのいずれか又は同時に幾つかに関わって生きていますが、折り合いが付かない時も確かにあります。そんな時どんな風に日々をやり過ごせば良いのか、特に最後のステージの時には近しい人ほど何も手につかなくなるものです。夢は意識と無意識の間のニュートラルな位置にある為、精神の不調を感じて平衡感覚を保つ為に寝ている間に治療のキュアリングを自然と始める事がありますが、本作での使い方は絶妙で湯本さんは流石です。
2016/04/02
KAZOO
湯本さんの2冊目です。姉と弟が日常の生活の生活感をあまり感じられないような状況を描いています。中学試験を失敗したことなども書かれていますが、どちらかというとどうでもいいようなあまり普通印象には残らないことをこの姉弟の視点で書かれています。自分もこんな感じだったのかなあと思い出させてくれる懐かしい感じを受けました。
2015/11/04
mocha
夏休みのわくわくとも、冬休みの慌ただしさとも違う。中学という未知の世界に続くトンネルのような春休み。思春期の入り口に立つ少女の痛々しさに苦しくなる。家庭や隣人とのいざこざに古い家がきしむように、少女の足場も不確かで、身の内の怪物が暴れる微熱の日々。無邪気な弟の後を追うことで、子供時代にすがりついているようにも見える。たくさんの猫、役目を終えたゴミ、建て替えられる家、分解されるオルガン、すべてが死と再生の象徴のようだ。命が芽吹く春に姉弟もまたしなやかに生まれ変わる。
2016/03/10
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