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バルタザールの遍歴 (新潮文庫 さ 29-1)

バルタザールの遍歴 (新潮文庫 さ 29-1)

バルタザールの遍歴 (新潮文庫 さ 29-1)

作家
佐藤亜紀
出版社
新潮社
発売日
1994-12-01
ISBN
9784101317113
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バルタザールの遍歴 (新潮文庫 さ 29-1) / 感想・レビュー

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一つの肉体に共棲する双子、メルヒオールとバルタザールの転落の物語。一つの肉体に二人の人間が棲んでいるという奇怪な設定だが、すぐに物語に引き込まれて、その奇怪さにすぐ慣れてしまった。舞台はウィーン。丁度ナチスが台頭している時代。その辺の歴史も丁寧に描かれており、双子の奇怪さとその時代の暗さがとても合っている。これが著者のデビュー作とは恐れ入る。このような該博な知識をどこで手に入れたのだろう。最後まで読んだ時、表紙の「ET IN ARCADIA EGO」の意味がわかり、物語として本当に良くできていると思った。

2024/03/12

南雲吾朗

舞台は1918年のウィーンから始まる。1つの身体に2つの人格を持って生まれてきた男子の物語。ダニエル・キースの作品の様な解離性同一性障害や多重人格の話なのかなぁっと思っていたら、まったく違った。20世紀初頭の落ちぶれ貴族の退廃的な生活や、破滅的な世界観をtwo in oneの変な主人公を通して語られるこの小説が、なぜファンタジーノベルズ大賞を取ったのだろうという思いは、第2部第Ⅱ章以降に完全に覆される。まさにファンタジーである。物語の流れ方は天使と似ていると思った。凄く面白かった。

2018/02/03

るぴん

佐藤亜紀さん初読み。海外の翻訳小説を読んだような、日本人離れした文章や言い回し。第二次世界大戦直前のヨーロッパを舞台にしているせいもあり、とても重厚な印象を受けた。一つの身体に宿った双子、メルヒオールとバルタザールの没落と転落、ナチスの影など暗くて退廃的な雰囲気が最初から続くので、鬱々とした気分で読んでいたけど、終盤でファンタジー色が強くなってから面白くなった。20代でこんな物語が書けるなんて凄すぎる!次は『金の仔牛』を読んでみたい。

2013/05/28

マサキチ黒

ほぼ4半世紀ぶりの再読。コレがデビュー作というのだから恐れ入る。確かに必要以上に硬い。目次を見ただけで本を閉じてしまう読者も多かろう。『第一部・転落』ヴィスコフスキー=エネスコ家の長子の名について。降誕節の天啓が我々の運命を決定すること、即ち世間の圧倒的無理解(以下省略)。しかしながらも佐藤亜紀氏独自のユーモア(?)が溢れ出す物語の破壊力は圧巻。語り手であるメルキオールの横から割って入るバルタザールの異質感。佐藤亜紀信者で良かったと思える一冊。新潮文庫初版(絶版)(笑)。

2023/03/24

テキィ

最近の“移動中に読む本”として完読。遍歴だけに、動いているときにピッタリ。“Et in Arcadia ego”は「アルカディアにもまた、我はいた」というラテン語らしい。「理想郷にも死は訪れる」という表通りの意と、「私もまた非実体化能力でもって世界を超越しているのだよ」という宣言なのか。 確かにファンタシィ色が終盤一気に噴出すなぁ、面白かったが。

2011/05/19

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