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バビロンに行きて歌え (新潮文庫)

バビロンに行きて歌え (新潮文庫)

バビロンに行きて歌え (新潮文庫)

作家
池澤夏樹
出版社
新潮社
発売日
1993-05-28
ISBN
9784101318110
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バビロンに行きて歌え (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

密航者ターリクを軸に展開する連作短篇が、全体として長編小説として像を結ぶという構成をとる。物語冒頭の飢餓感、焦燥感、異質な空気感は読者をワクワクさせる強い推進力を持っている。このあたりは、まさに池澤夏樹ならではの世界だ。ただ、残念ながらそれは第3篇の「ブルー・プレート」あたりまで。物語の軸となるターリクの魅力が最後まで読者を牽引するが、それも次第に都市、東京の中に溶解していってしまう。小説の構想としては、両者の関係が最後まで引き裂かれたままであった方が、トウキョウを異化しえたのではないかと思われる。

2015/01/31

NAO

行き場をなくしたアラブ人青年の再生の物語。言葉も人種も生活環境もまるで違った場所にいきなり一人で投げ出されたターリクだが、彼が故郷において戦士であったことは、そういった苛酷な条件でも孤独に押しつぶされることなく何とか生きていくことができるだけの強さを与えていた。その後、捨て犬、老獣医との繋がりを得るが、ターリクは日本語の学習書をもって獣医の元を離れ、自らの道を歩み始める。ターリクは、「東京という街が僕を変えた」というが、それは、ターリクの中に変わるだけの柔軟さがあったからこそのことだ。

2022/02/22

ゐづる

少し前の東京。レバノンの戦士、ターリクが密航してくる。彼はこの国の言葉も話せず、金もなく、パスポートすらない。そんな彼が唯一持っていた歌の才能で成り上がっていく物語です。いくつかの章に分かれていますが、一番のお気に入りは教科書で読んだ「倉庫のコンサート」。ある少年が母の死をターリクの歌で乗り切るお話です。若くして母をなくした少年の心を表すかのような淡々とした文章が、レコード屋の女の子が登場した途端に花が咲いたように明るくなるところが昔から好きでした。私が自分の意思で買った初めての小説がこの作品です。

2015/03/05

miroku

異国TOKYOの雰囲気を最後まで味わわせて欲しかった。ライトに流れてしまったのが悔やまれる。

2015/02/12

エドワード

中東地域はもう何十年と戦闘状態が続いている。祖国にいられなくなった戦士が、船で東京へ密入国した。世界一安全?な日本は驚きの連続だ。建物が整然と並び、道も車もきれいだ。だが彼は一人で歩くのが恐い。隠れる場所のない広場が恐い。警察が恐い。パスポートがないからだ。そんな若者、ターリクが行く先々で出会う男女との交流。章ごとに唐突に始まる物語がひとつにまとまる過程が非常に面白い。終段でターリクはパスポートを取り返すが、身体が戦士の感覚を忘れていないのが哀しい。不思議と皆に愛されるターリク。歌は国境を越えるのだ。

2014/10/01

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