クジラが見る夢 (新潮文庫 い 41-6)
クジラが見る夢 (新潮文庫 い 41-6) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
著者の池澤夏樹がカリブ海域で、ジャック・マイヨールと共に過ごした日々の記録。マイヨールは、かつて素潜りで水深105mという驚異的な記録を打ち立てた人。そんな彼の挑戦を描いたのが映画『グラン・ブルー』だ。ここに語られているのは67歳のマイヨール。今や海の自然哲学者のごとくだ。海中でイルカと戯れ、クジラと目を見交わす。マイヨールは言う。海の中でほとんど敵を持たず、食べ物のことで思い煩うことのないクジラは、1つのテーマを1年がかりであるいは10年がかりで瞑想し続けるのだと。クジラに対する見方が変わる本だ。
2014/11/15
たーぼー
夏の高揚感に満たされたいから、神秘的な大海原に運び出されたいから、クジラさんイルカさん無垢なままの彼らにせめて空想の中でも戯れたいから、この書を手に取る。ジャック・マイヨールと過ごした幸福な日々の記録。収められた写真の青が、人々のこぼれる白い歯が眩しい。人が野生の動物と親しくなることは難しい。『学術的な』とか人間の都合としての理由はあるけども。クジラ達が見る夢を共に見たいのなら南に行けばヒントがあるかもしれない。今でもジャックはその答えを見出すべく西インド諸島の海の中でクジラ達と戯れているのかもしれない。
2015/07/18
booklight
ジャック・マイヨールの晩年の日常を共にした池澤夏樹のエッセイ。イルカと共に過ごし、クジラに近づこうとするジャック・マイヨールのシンプルで自由な生活。自分のやりたいことを中心に、他のことをそぎ落とした日常。その中心にあるイルカやクジラへの思いの深さと広さは、簡単には伺い知れない。生命の危機に煩わされないクジラは、どんな夢を見るのだろうか。それに近づこうとするジャック・マイヨールの生の在り方は、池澤夏樹という器を用意していも、当事者と傍観者の線は超えられない。異世界に触れ、底を覗くと不思議とさみしさがつもる。
2019/09/14
Shoji
著者がカリブで素潜りの記録保持者であるジャック・マイヨールと過ごした日々をもとに綴られたお話です。すごく雄大な物語です。広い海原、カリブ海、巨大なクジラ、遊びまわるイルカ達。それだけで絵になります。海に潜ってクジラに出合い、そこにたゆたうクジラが見ている夢と同じ夢を見る、そんな何もかもとてつもないお話。ロマンチックで素敵な文章が綴られていました。
2020/09/13
Book & Travel
映画『グラン・ブルー』は大好きな映画で、学生の頃に見て以来、もう何度見たかわからない。本書は1994年、著者がその主人公ジャック・マイヨールとカリブ海で過ごした日々を記録したもの(映画は実話ではないが)。イルカと、そしてクジラと交流する67歳のジャックを間近で見ながら、常人には図り知れない彼の心情に迫っていく。静かな文章で描かれる「クジラに最も近い地上の生き物」ジャックの生き方やセリフ、イルカやクジラが目の前を通り過ぎる光景に、ただただこの世界にずっと浸っていたいと思える読書時間だった。
2017/08/07
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