町へ出よ、キスをしよう (新潮文庫 さ 27-1)
町へ出よ、キスをしよう (新潮文庫 さ 27-1) / 感想・レビュー
新地学@児童書病発動中
懐かしい80年代の雰囲気が甦るエッセイ集。「不可解な町」のような短いエッセイにも、あの時代の空気がタイムカプセルのように封印されている。東京に億単位のマンションが建て始められた頃の話だ。今から考えたら80年代は牧歌的な時代だった。経済は今のように完全にグローバル化しておらず、日本の経済力も強かった。その繁栄の中にある空虚さに、気付いていたのが鷺沢萠ではないだろうか。ユーモラスなエッセイの中にも切なさが秘められていて、読んでいると胸が締めつけられる気がした。
2018/09/08
ひめか*
鷺沢さんが丁度今の私くらいの歳に書いたエッセイなのね。大人のようでまだ子供のような…でももっと大人に感じる。私と同じくらいの経験のはずなのに経験豊富な感じがする。5が特に共感!鷺沢さんの読書に関するエッセイはいつも、うんうん頷きながら読んでいる。「大切なのは何かとの出会いを自分なりの方法で自分の中にしまえることだ」「読み手と書き手の間には深くて長い川がある。だから読書は面白い」文章を読んでもらうことは、自分の意識や思考を積極的に表にさらけ出すことだから露出狂の変種かもって、文章書く身としてはとてもわかる笑
2015/06/04
森の三時
鷺沢萠さんは昨年出会った作家さんで、20歳前後で書かれた「川べりの道」「帰れぬ人びと」を読んだとき不意に心に触れられてしまった。この「町へ出よ、キスをしよう」 は18~23歳の頃のエッセイで、彼女の青春時代である1980年代の出来事が主に綴られています。若くして驚くほど老成した作品を書いた彼女だから、苦労ばかりされたのかと想像していましたが、ちゃんと楽しいことがあった青春を過ごし、チャーミングでユーモアのあるお嬢さんなので安心しました。相変わらず文章がうまいです。35歳で夭逝、生きていたらまだ50代前半。
2020/01/26
あつひめ
作家さんのつぶやき集って感じの作品。小説の中では見られない姿があちこちに点在する。お姉ちゃんにお守りをしてもらったからひょっこりひょうたん島が歌えちゃう・・・なんかいいなぁ。作品ではいつも複雑な家族を書いているけど・・・この本では忙しい母の変わりに末っ子の鷺沢さんの面倒を見る姉がいる・・・温かい雰囲気~。書き手と読み手の関係・・・は大きく頷いてしまった。こうして読むことに夢中な私も覗きの趣味ありみたいだなぁ~。引き続き鷺沢さんの作品を読みます。
2010/06/30
NY
未読作家の鷺沢萌を読んでみたくて、でも年末年始は疲れていたので軽いものを、と思い手にとった一冊。あの時代の若者の、等身大の感覚が、そのまま届けられた感じ。まさにタイムカプセル。なんとも言えず、なつかしい…年代的には少し上の先輩。
2020/12/30
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