ビューティフル・ネーム (新潮文庫 さ 27-11)
ビューティフル・ネーム (新潮文庫 さ 27-11) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
鷺沢萌の最後の作品集。遺稿となった断片と未完の1篇を含む。彼女が亡くなっていなければ、3つの作品からなる連作短篇集『ビューティフル・ネーム』が完成するはずであった。ここにいうビューティフル・ネームとは、韓国語(朝鮮語)の名前に纏わる在日の人々の煩悶と苦悩と、そしてそれと同時にある突き抜けた明るさのシンボルに他ならない。おばあちゃんみたいな名前の春純、通名と韓国語の本名の間を揺れ動く奈蘭の物語「眼鏡越しの空」。一方ではそれが軽妙に語られる「故郷の春」。鷺沢萠は、何故突然にその人生を放棄してしまったのだろう。
2018/04/07
ann
特に最初の二編。読むことができて良かった。この年齢になっても「知らないこと」を「知る」ことができるうちは「知りたい」し、「知らなきゃ」と強く思えたことが収穫。未完が悲しい。何年経とうが。
2023/10/14
ふみ
在日韓国人のアイデンティティをさぐる2篇。時代や世代だけでなく、個々人のあり方を丁寧に描いてある。 そしてまさに絶筆である未完の作品。鷺沢萠 かくれんぼするみたいに消えてしまった。
2018/05/10
みらこー
三浦春馬さんにお悔やみです。突然の死で仕事に穴がって、人間誰しも明日生きとるか分からんのやから誰でも同じことやろと思って読んだ鷺沢萠さんの遺作。四短編のうち2つは未完だけど大筋は分かる。全て在日コリアンにスポットをあてたお話。我が福岡は戦時中だけでなく土地柄で数千年の長い歴史の中で幾度も行き来があるので、現在日本国籍とはいえ自分にも少しは血が混じっとるんやないかなとは思ってますが。名前と国籍で差別偏見拘り、鷺沢さんの言うとおりほんっとに日本政府ってくだらんですね。在日さんの気持ちをコミカルに学べる本でした
2020/07/25
アコ
3篇+未完のもの、という嬉しくない珍しさの短篇集。3篇中2篇+未完は在日韓国人と通名がテーマ。ユーモアを交えたものだけど、ずっしり響く。名前というものは与えられるものであることを痛感。「眼鏡越しの空」は正統派、というか著者らしさを感じる文体だったけども、軽妙さがある「故郷の春」のほうが好み。自身の高校時代をモチーフにしたのかな?と感じる「春の居場所」もよかった。短編映画になってたんだね。
2019/01/10
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