ワイルド・ソウル 上 (新潮文庫)
ワイルド・ソウル 上 (新潮文庫) / 感想・レビュー
しんたろー
多くの読友さんに勧められ、数々の賞を獲った作品なので、高ハードル状態で読み始めた…ブラジル奥地での描写が想像を絶する過酷さで痛々しく早くも第一章で打ちのめされた。政府の無謀な政策で「棄民」とされた60年代の移民のドラマが哀しく、憤りを止められない。主人公・衛藤の慟哭に同化し、彼を支えるエルレインの愛に涙する。この時点で著者の術中にハマり、第2章で現代東京パートが始まりワクワク…実行犯の山本、松尾、ケイの3人と元女子アナのダメ報道部員・貴子の目線が加わり「どんな復讐をするのか?」と期待が高まって下巻へGO!
2019/11/14
🅼🆈½ ユニス™
何て凄い作品なの❗️何百種類の複雑な機械が交じり合って奇跡的に機能するかのように目もくらむ世界を堪能させる。言葉以上に凄い一冊❗️無責任な国策の名の下、多くの若者たちが海の向こうへと掃き出された棄民となる。首からカメラを下げた裕福な日本人観光客の傍でゴミを拾うアマゾン牢人であった衛藤。地獄の生活から這い上がっては成功を収めてはまたもや築いた家族を失う過酷な運命に晒される。衛藤、ケイ、松尾そして山本。血縁同盟関係者が集まり国民を裏切った政府に復讐を試みる‥。透かさず下巻に飛び付く❗️
2018/05/10
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
1961年、日本政府の募集でブラジルに渡った衛藤。だが入植地は密林で、移民らは病で次々と命を落とした。絶望と貧困の長い放浪生活の末、身を立てた衛藤はかつての入植地に戻る。そして現代の東京。政府の裏切りへの復讐計画を実行に移す・・・。スケールもでかく、ストーリーも見事。垣根さんの話はちょっとチャラい系と、本作のようなワイルド系があるが、断然後者の方が面白い。中でも本作は個人的には一番。★★★★★
とん大西
過酷、壮絶、絶望…。未開のアマゾンが彼らにもたらすのは恵みの雨ではない。希望を呑み込む濁流。密林奥深くで発生する疫病。文化とは無縁の牢獄のような暮らし-。戦前戦後、楽園への移住という甘言のもとに国家に見放された4万人以上の日本人。地球の真裏で夢は潰えた。衛藤はさまよった。魂だけが流浪した。そして-。追憶のリズムに乗せ、男たちのラテンなリベンジが胎動する。ターゲットは日本国。男達の吐息がアツい。こみあげる哀しみさえアツい。まさに、ワイルドでソウルフル。衛藤、ケイ、松尾の一挙手一投足に目がはなせない。
2020/07/29
KAZOO
この作家の本は「狛犬ジョンの軌跡」だけを読んで、よかったので三賞を受賞したこの本を読んでみることにしました。読んでいて感じたのは昔読んだ船戸与一さんの南米シリーズを思い出しました。戦後の日本の移民にこのような事実があることさえ知りませんでした。事実であるとすれば、当時の関係者は罰せられて当然だとは思いますが、その復讐譚がどのような決着になっていくのか目が話せません。
2015/06/08
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