ラスト ワン マイル (新潮文庫)
ラスト ワン マイル (新潮文庫) / 感想・レビュー
W-G
著者の物流業界物三冊目。どの作品も、アイデアの端緒は似ているのに、そこからの発想の広げ方に違いがあり、それぞれ面白い。通じて、地方活性にヒントが潜んでいることになっているが、現実ではそこがブレイクスルーを阻む最大の要因にもなっていそう。他の二冊でも感じたことだが、知恵を形にしていくまでの濃密さに対して、事が動き出してからがかなりアッサリに思える。もっと徹底的に盛り上げてもいいし、もしくはもう1ハードル持ってきて欲しいような。続きが気になる腹八分目でしっかりフィニッシュしているということでもある。
2020/02/19
のっち♬
IT企業の値下げ要求で窮地に立たされた運送社営業の横沢は、商流末端の強みを生かした出店料無料のネット通販を企画する。テレビ社買収を狙う敵方の社長の視点では周囲の嫉妬や利得権への欲望が描かれ、お互い退路を絶った全面対決へ向かってテンションは綺麗に右肩上がり。発刊は2006年、至って順調な進行の中に窺われるITとメディアの融合に対する著者の嗅覚と予見性は鋭い。推進力は大方部長が担っているのだが、交渉面でも「ラストワンマイル」な社内ポジションの強みを効かせている。「安定は情熱を殺し、緊張、苦悩こそが情熱を産む」
2021/12/25
gonta19
2009/10/3 ジュンク堂三宮本店にて購入。 2018/2/2〜2/3 楽天、ライブドアを彷彿させるIT 通販業者とヤマトとフジテレビを彷彿させる宅配便、既存マスコミの闘い。いやいや、超絶面白いビジネス小説だ。ラストワンマイル、というタイトルも見事。この商売ほんとに出来ないもんかな。最近の運送業界の人手不足もあって難しいか。
2018/02/03
hiro-yo
タイトル見たところでは登山の物語かと思ってしまいましたが、新興IT企業vs.宅配運輸会社を描いたビジネス小説でした。刊行が10年前なのでやや時差感がありました。どの企業も新規ビジネス開拓は重要な課題です。暁星運輸は主要顧客である蚤の市から裏切りとも言える取引条件の変更を求められた。企業存続のために、そして蚤の市への復讐のために奮闘する営業マン。現実ではこんなにうまく行くことはないだろうが面白かった。「安定は情熱を殺し、緊張、苦悩こそが情熱を産む」…肝に命じます。
2017/01/03
アッシュ姉
楡周平さん初読み。硬派で重厚なイメージを勝手に持っていましたが、とても分かりやすく読みやすい経済エンタメ小説でした。新興IT企業による放送局買収劇をバックに、郵政民営化や他社との価格競争により窮地に立たされた物流企業が新たなビジネススキームを構築していくストーリー。実在モデルが分かりやすいので、ノンフィクションのように興味深く、展開はフィクションとして楽しめて一粒で二度美味しい。追いかけたい作家さんがまた増えました。
2016/08/29
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