白いしるし (新潮文庫)
白いしるし (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
最初にはっきりと言うが、本書は失敗作である。裏表紙の惹句によれば「超全身恋愛小説」ということだが、どこが超全身だかは全く不明である。難点はいろいろとあるが、最大の欠点は小説としての構成が行き当たりばったりである点だ。そのことを如実に示すのが、猫が登場してからの主題の破綻だ。最後は、本来の主題に収斂させようとの努力の跡が見られるが、それにも無理がある。結局のところ、何を描きたかったのかわからない。おそらくは作者自身にもそうだったのではないだろうか。時系列には読んでいないが、次なる作品に期待したい。
2018/09/20
さてさて
『私は太陽に向かっていく話を書きたいんやなって思いました』と語る西加奈子さんが想いを込めて描くこの作品は、『三十二歳、独身で恋人もおらず、アルバイトをしながら、金にならぬ絵を描いている』という現実を生きる一人の女性が主人公となる”恋愛小説”でした。『失った恋からどう立ち直るか』という瞬間を見る恋の物語は、まさしく西加奈子さんが描こうとされた『太陽に向かっていく』瞬間を垣間見るものだったのだと思います。それは、まさしく”恋愛小説”の王道をいく物語。西加奈子さんらしい筆力でぐいぐい読ませる、そんな作品でした。
2021/12/20
抹茶モナカ
画家の夏目香織が間島昭史という画家に恋をする物語。ストレートな主人公とそれを取り巻く歪な登場人物達。短い間の恋の話で、幾分、爽やかに終わる失恋物語。ちょっと個人的には好みな話ではなかったのだけど、主人公の世界に対峙する背筋の伸びた感じが良くて、読み通せた。プロレスラーの三沢光晴選手の死亡事故の事が出て来て、名前は伏せてだけど、現実が入り込んで来た風で、そこだけ功罪はあるだろうけど、強烈な印象でした。
2016/08/11
しんごろ
30代の女性が全身全霊をかけた恋愛小説でした。とにかく全身全霊、一にも二にも全身全霊、そして全力です。恋の相手はクセが強いというか、個性が強いというか、変態というか、変人というか、要するに訳わからないのですが、そこにユーモアを感じて、さらさらと読めますね。だけど、男はいかなる理由があるにせよ、女性に暴力はダメですね。西加奈子さんの作品は、なんとなく、よしもとばななさんに感じが似てる気がするなあ。恋する女性を、全身全霊をかけて応援したくなる作品です。
2018/05/30
そる
この感情は分かる部分と分からない部分がある。登場人物達が芸術家、過去が複雑なゆえか、感性が鋭く意外なところで反応する。この恋にハマったらダメになる、とか失恋した時の反応は分かる。性描写ないけど、本当に好きな人とはあってもなくてもいい、と思う。「だからこそ彼に触れるとき、彼の頭を、肩を叩くとき、自分の感情をもてあました。もっと触れたい、と思う自分の感情、ねちゃねちゃとした慾を、邪魔だと思った。自分が女であること、彼の異性であることが、歯がゆかった。最高の「友達」になって、彼といつまでも話をしていたかった。」
2019/11/07
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