地震と独身 (新潮文庫)
地震と独身 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
2011年3月の大震災を多くの当事者たちとのインタビューを通して意味づけ直したルポルタージュ。酒井がここで用いたキー・コードは「独身」。突発的な震災時に親は子を思い、子は親の安否を気遣う。そうした時に比較的に自由なスタンスをとれるのはまさに独身者たちである。本書の切り口から私がまず目を開かれたのは「災害ユートピア」という視点。レベッカ・ソルニットによる実に醒めた指摘なのだが、ある意味で本質をついているだろう。また、ボランティアを流通させるボランティアの存在や、「ふくは家」プロジェクトは実にユニークな⇒
2019/09/17
さと
私はあの時、刻一刻と更新される被害状況を見て実態を知った気になっていたのだ。感じた全ての感情はドラマや映画を見てのものと同質であり、それによって震災を体験した気になっていただけだ。彼らはあの時何をしたのか、しなかったのか、どう変化したのかというまさに実態を教えてくれた一冊だった。人は全てを失うと一旦動物に堕ちるが、パンだけで生きていけない生き物であり、人を助け、人に与えられながら心を満たしていくのだ、その能力を授かっている生き物なのだと改めて知った。彼らを通していかに生きるかを再考させられた一冊だった。
2017/03/14
扉のこちら側
2016年807冊め。家族の絆が声高に叫ばれるようになった東日本大震災時に、独身者は何を考えどう生きていたのかということに焦点を当てた作品。日ごろから著者の「独身モノ」作品は面白いと感じていたが、この本でも「災害ユートピア」で居場所探しだとか、なるほどなと思わされる記述がたくさん。いつかまた再読しようと思う。
2016/10/08
優希
3.11は様々な人に影響を与えた大地震だと思います。そんな中で、独身者の声を聞いていました。ルポタージュとして描かれているからなのか、自分の3.11を思い出し、今後起こると言われている南海トラフのとき、どうなるのだろうと不安になりました。
2022/06/16
to boy
独身者に視点を向けて3・11を語った貴重な記録。震災で家族を失った話はたくさん報道されましたが、心配する家族のいない独身者が何を思い、どう行動したのか詳しく書かれています。身軽さ故に遠くに避難した人、逆に遠くから仕事を辞めて被災地に駆けつけた人。また、心配する家族がいないので、仕事を続けた人、独り身が心細くなって結婚に踏み切った人。それぞれの事情はあれど震災という契機がなければ現れなかった姿が丁寧に描かれています。
2016/09/14
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