千両かざり 女細工師お凜 (新潮文庫)
千両かざり 女細工師お凜 (新潮文庫) / 感想・レビュー
タイ子
「恋細工」改題本。老舗の錺(かざり)職の4代目が亡くなり、店を切り盛りするお凜。女性の錺職人が珍しかった時代、お凜は隠れるように一人錺細工の修行に励んでいた。天才肌の時蔵の出現でお凜の心に芽生えるほのかな想い。天保の改革で奢侈禁止令の元、金銀を使用する錺においてこんな苦しいことはないだろう。幼馴染みのお千賀の存在が頼もしくも微笑ましい。江戸っ子の気質を活かしたある秘策が後にお凜を悲しみの淵に陥れようとは・・・。職人の粋と恋心の切なさがお凜を通して胸に沁み泣ける。光射すラストがいい。
2020/11/13
ふじさん
錺職の老舗「椋屋」の娘・お凛は、亡くなっ義兄の遺言により、五代目選びを任されることになる。跡目争いで混乱する中、相続候補の一人に時蔵という江戸では見られれない技で簪をつくる凄腕の職人が現れ、椋屋一門に波紋が広がる。天保の改革で贅沢品が禁じられ商いが難渋する中、千両かざり制作という驚きの注文が入る。改革で思うような仕事が出来ずにいた職人は、江戸の町に活気を取り戻したととお凛と時蔵を中心にこころひとつにして作品づくりに挑む。職人世界の心意気と人情、一人の女のひた向きな生き方を描いた小説。
2021/08/04
shincha
図書館本。序盤2/3までは、江戸職人ものの普通の時代小説か…この時代に女職人は大変だ…という淡々と進むストーリ―だと思いきや、残り1/3からは怒涛の展開。表題の千両かざりの意味もこのあたりからわかりだす。最後は、空の上から降る雪と時蔵がお凛の中で融合し、優しい気持ちにしてくれる。女親方を受け入れなかったことの本意がわかる。西條那加さんの女性の描き方がいつでも新鮮で秀逸。楽しい読書でした。
2021/11/19
ぽろん
大好きな西條さんの時代物。前に読んだ気がしたら、やはり、「恋細工」の改題本でした。でも、好きな本は何度読んでも面白い。女だてらに錺職の修行を密かにしている椋屋の娘お凛は、たしか17歳と思ったが、本当にしっかりしている。天才肌だが、人嫌いの時蔵がお凛と心通わせていく様は、もどかしくもあったけれど、心震える物語でした。
2020/11/03
moonlight
時は江戸時代、天保の改革により贅沢が禁止され、華美な服装や芝居は取り締まりを受けていた。餝職の“椋屋”は多くの職人を抱える老舗だが、金銀細工を作ることを禁止されては腕をふるうこともできない。閉塞感漂う雰囲気はコロナ禍の緊急事態宣言を思い出してしまった。椋屋の娘、お凛が当時としては珍しい女餝職人として成長していく姿が描かれる。非凡な才を持つ時蔵に惹かれていく気持ちとその後の顛末が切ない。“平戸”ってどんな細工かと調べてみたら現在もアクセサリーが作られていて繊細でとても美しい。
2022/12/26
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