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みずうみ (新潮文庫)

みずうみ (新潮文庫)

みずうみ (新潮文庫)

作家
よしもとばなな
出版社
新潮社
発売日
2008-11-27
ISBN
9784101359328
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みずうみ (新潮文庫) / 感想・レビュー

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おしゃべりメガネ

「気持ちの暴力が少ない人」-この1文にこの作品の全てがつめこまれているのでしょう。作品自体はいつものばななさん以上にゆったりしていて、子守唄をきかされているかのような静かな空気につつまれています。決して退屈という意味ではなく、これほどにまで‘静けさ’を文字で書きつづる作家さんはそう多くはいないだろうなと感じずにはいられません。正直、他の作品に比べると平和すぎて、中だるみがなくはないテンポとも思えますが、たまにはこれだけゆっくりとしたばななさんも味わってみるべきかなと。ホント、ピュアな恋愛ってスゴいですね。

2015/07/30

アン

風が吹き、湖面の細波がきらきらと輝くような静かなみずうみ。湖畔にある家には過去に中島くんと交流のあった兄と妹が住み、ちひろと一緒に会いに行くことに。大好きな母を亡くしたちひろと心身共に何か深い苦しみを抱えている中島くん、謎めいたミノくんとチイさん。みずうみが色々な顔を見せるように、繊細な世界は、強く結びついているようで儚いものなのかもしれません。だからこそ確かな存在を求めたくて…。心を開くことの大切さ。心の疼きや淋しさを優しく包み込む言葉。表紙の写真が深い闇に煌く光のようで、哀しいほど美しく幻想的。

2020/05/02

ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中

この人の話はことごとく人のこころの優しくて柔らかい部分をぎゅっと掴む。すべての人が美しいような。 スナックのママである母を失ったちひろは、アパートの窓越しに中島くんと知り合う。中島くんに心が寄り添っていくのを感じるが、彼には何かとんでもなく普通ではない傷を感じて… 「みずうみ」というタイトルとキラキラした装丁にふさわしい、静かでぞっとするほど淋しくて、じわじわと心に沁みてくる素敵なお話でした。 日々を慌ただしく過ごすといつしか積もってしまうものだけど、意識して「気持ちの暴力が少ない人」に私もなりたい。

2018/04/13

風眠

特に大きな波乱やドラマが無いまま、淡々と静かに物語は終わるのかと思いきや、ラスト近くで、一気に全てが明らかにされていくところは圧巻だった。幼い頃、カルト教団に誘拐され、洗脳され、自分が居る場所は日本なのか何なのかも分からないという特殊な環境で数年を過ごした中島くん。教団から逃げ、無事に家族のもとへ戻り、これで安心・・・という風にはいかなかった。母親の強烈な愛情が、心の脆さや危うさとなって内側から家族を壊しはじめる。ひたひたと少しずつ水に浸っていくような、幸せでもない、けれど、哀しいだけでもない物語。

2012/10/16

masa@レビューお休み中

記憶、愛情、欲望、恐怖…。どれもが誰の心にも必ずあるものである。それは当たり前のものなのに、それぞれの比重が偏りバランスが崩れてしまうと、ふつうの人間生活すら送ることができなくなってしまう。異常としか思えない過度の愛情、忘れようとしても決して忘れることができない記憶、人に触れることすらできなくなってしまうような恐怖…。それらは、生きる欲望を食い尽くす害虫のように心を蝕んでいく。異常な体験をすればするほど、平凡で当たり前のことが大切だということに気づくのかもしれない。

2013/06/23

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