アナザー・ワールド―王国〈その4〉 (新潮文庫)
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アナザー・ワールド―王国〈その4〉 (新潮文庫) / 感想・レビュー
おしゃべりメガネ
あ~、残念ながら遂にシリーズ最終作となってしまいました。全4巻にわたり、不思議ながら、本当にココロ温まるばななさんワールドをこれ以上ないくらい堪能させていただきました。本作はこれまでの3作から少し時系列が未来へ行こうした文字通り「アナザー・ワールド」な内容です。楓、雫石、片岡さんのその後が娘「ノニ」をとおして温かさを失うコトなく、ファンタジー感満載に描かれています。読み進めれば進めるほど「あ~、このシリーズ、読んできて本当に良かったなぁ」というキモチにさせてくれます。オススメしてくれて読友さんに感謝です!
2015/06/26
ヴェネツィア
「王国」4部作の完結編。物語はミコノス島にはじまり、沖縄、ランサロテ島、そして最後は天草と、その舞台を移して行くが、こうして並べてみるまでもなく、ばななさんの南指向(嗜好でもある)は明らか。それに加えて今回は島指向でもある。したがって、そこに流れる空気と時間はいたってゆるやか。それゆえにか、登場人物たちの存在感までがなんだかゆるい。もっとも、サラ以外はみんな多かれ少なかれアナザーワールドと繋がっているのだから、それも当然なのか。この本が、隆明氏が最後に自分の眼で読んだのだと聞けば、感慨もまたひとしおだ。
2013/11/11
いたろう
王国シリーズ番外編というか後日談。本作の主人公は、雫石の娘、ノニ。ノニの実の父は楓(パパ)だが、ゲイの楓の恋人、片岡さん(パパ2)が、戸籍上の父という複雑な家族。元々、恋敵同士だったママとパパ2は、パパが病気で亡くなった後も、恋愛感情はないままウマが合い、夫婦、ノニの両親として、家族を続けている。そんな変わった家族の中で育ったノニの、自然体の生き方がいい。ノニが見た、ギリシャ・ミコノス島、リトルヴェニスの夕陽、スペイン(と言ってもほとんどアフリカの)ランサロテ島のマンリケ設計の建物をいつの日か見てみたい。
2022/08/13
MINA
片岡ノニは見事に雫石とは似てないなぁ。このシリーズ4作は何度も何度も読み返した。言葉の一つ一つが透明でシンプルで、物事の本質を捉えて突き刺してくるような感じがとても好き。楓は雫石と片岡さん二人に猛烈に愛されて幸せだったろうな。楓かノニに「君はあの無神経なところがある親たちを殺したいと思うときもあるだろう/あの人たちにはそんなふうに君が必要なんだ」て言う場面が印象的。ノニが片岡さんの傍で「この人が家族でほんとうによかった」と泣くラストには感動した。片岡さんのとぼけた返事も微笑ましい。瑞々しく綺麗な物語。
2014/03/21
MINA
「とにかくなにかと戦い続けていくしかないし。おのれと。/自分の中をきれいにしておくことしか、人間にはできない。」4年ぶり再読。引っ越し続きで定期的に本はブックオフ行きで本棚の中身回転率凄まじい中、『王国』シリーズだけは絶対に捨てられない。文庫あとがき通りまさしく「そうか、ちょっと自由な気持ちになれた」。いつも何を無駄に焦って悩んでいるんだろうと思える。物事はいつだってシンプルなのになーとある種の自己啓発本の役割がある物語といったら違うけれど、自分を正しい方向に導いてくれるような包容力のある作品だと思う。
2018/03/10
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