模倣犯(五) (新潮文庫)
模倣犯(五) (新潮文庫) / 感想・レビュー
パトラッシュ
(承前)一連の殺人は人の弱さを暴く。被害者遺族は「何かできていたら」と己を責め、加害者家族はカーストの最下層へ転落する。ヒロミも真実に耐え切れず事故死し、由美子は自殺に追い込まれる。すべてを操っていたはずのピースすら滋子にプライドを傷つけられて逆上し、テレビで犯行を告白してしまう。唯一、戦争を体験し世の辛酸をなめ尽くした義男は、孫娘を失いながらピースの身勝手さを一喝し叩きのめす。大人たちの愚行を見続けた真一は、めぐみから逃げるのをやめ強く生きようと決める。真一の犯罪に巻き込まれての成長物語として救われる。
2021/12/28
yoshida
最終巻も一気読み。網川の生まれと大人の顔色を窺い育った幼少時代。不幸な生い立ちはあるが、網川が人でなしということに変わりはない。自分以外の他者を大衆と見下し、駒と扱い人が死ぬことに斟酌しない。肥大した自惚れと自己顕示欲は連続殺人という作品を世間に提供するという異常さで現れる。肥大した自尊心と、他者への根拠なき優越感は誰もが持つ感情と思う。実際に網川の嘘は警察で着実に暴かれる。網川が特別な犯罪者でなく自尊心の肥大した異常者であることが、物語にリアルさを与える。真一の未来、前畑夫婦の和解に泣きたくなる。名作。
2019/01/27
ykmmr (^_^)
ついに、最終巻。ミステリー初心者の私には…というか…語彙力の無さだけかも知れないが…あまり『模倣犯』の意味は分からなかった。しかし、納得・圧巻の完結。ピースの人間性がこの巻の殆どを占めて、憤りを感じる訳だけど、奴は変に知性などもあって、『完全犯罪』の実現も可能そうで、逮捕されて何よりである。そんな彼に、愛する孫を殺されながらも、有馬の人生経験を積んだ『諭し』に感服させられ、どちらかと言うと、加害者重視で、被害者や遺族が報われない司法にも問いかけがなされている。
2022/03/26
どんちん
スピード感はなく、想定外な事も起きず、囲碁の詰め?!のように淡々とエンディングをむかえたような感じだった。それほど情報がない建築家がほぼ事実を解き明かせた事も多少不満(だったら他の刑事がわかるはず)。さらに残念なのはTVでのピースの自白だ(滋子とのシーンは読み応えはあったが)。事実を積上げた刑事がじわりと追い込み、それをピースがどう対峙するか、ちょっと期待した。その上で完膚なきまでやり込めての逮捕でこそ、勝利ではないだろうか。それと、この巻でのピースのは今までと同一人物?と思えるほど弱かったのは気のせい?
2013/06/16
nobby
最後の最後で『模倣犯』の意味が炸裂!ここまで充分に読んでいるピースの犯罪が思う様に明かされずもどかしい。それでも少しずつの解明につながる伏線は、長い展開の中でエピソードしっかり思い出す。何にしてもピースの自信家で英才が故の勘違いや独りよがり具合が鼻について仕方ない。逆に、馬鹿にする人物が思いの外、なびかない様が痛快。悪あがきするピースへの義男の力強い説得「黙って聞け!」が爽快。その義男のラスト酔いどれての叫びが涙を誘う…さすがの大作、息もつかせぬ一気読み楽しんだ♪
2017/02/02
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