悲嘆の門(上) (新潮文庫)
悲嘆の門(上) (新潮文庫) / 感想・レビュー
パトラッシュ
宮部みゆきを読んでいると、落語を聴いているような気分になる。もっとも明確に滑稽噺や人情噺だと分けられるものは少なく、舞台や時代や登場人物で片方に寄ったり混ぜ合わせて読みやすく面白いドラマに仕上げていく。いわば話芸の巧さで多彩な創作をしており、その分類法でいけば本書は人情噺を加味した怪談噺か。空を飛ぶ有翼人を匂わせたと思うと現代社会での連続失踪・殺人事件に話が移り、謎を追う関係者が社会の矛盾に遭遇しながら思いがけない事態を経て相知ることになる。鮮やかな語り口や予想外の展開に読者はついていくしかない。(続く)
2021/11/03
bunmei
2018年、初読みは宮部作品の長編、先ずは上巻から。連続指切り殺人事件を軸として、サイバーパトロールのアルバイトをしている大学生の孝太郎と持病を患いながらも、元刑事の勘で事件の臭いを嗅ぎ分ける都築の目線で物語は展開。そこに、孝太郎のバイト仲間の森永やリヤカー爺さんの失踪、そして、筒型ビルの上の動くガーゴイルの都市伝説…。様々な事件への布石が上巻にばら撒かれています。これらが一つ一つが絡み合っていくであろう中、下巻にグッと興味も惹きつけられます。これが宮部作品なのでしょうね。
2018/01/07
yoshida
西新宿にある廃ビル。円筒形からお茶筒ビルと呼ばれる。元刑事の都築は、お茶筒ビルの屋上にあるガーゴイル像が動いていると聞かされる。他方、ネット警備の会社でアルバイトをしている大学生の三島は、ホームレスの失踪が続いていることを知る。失踪を独自に調べていたバイト仲間の森永も忽然と消える。都築と三島はお茶筒ビルのガーゴイル像に行き当たる。現実の中にファンタジーの要素が絡む。夜に羽ばたくガーゴイル。並行する猟奇殺人事件がどうリンクするのか。宮部みゆきさんの筆力で読ませる。展開は全くもって謎。次巻を楽しみに読了。
2021/01/11
KAZOO
宮部さんの長編で、サイバーテロに関するものだと思っていたのですが、若い人が主人公のファンタジーという趣が強いものだと思いました。大学生で、サイバーテロ監視会社で働く主人公がいなくなってしまった同僚の大学生を探すうちに元刑事の人物と一緒に捜索し始めます。それまではいわゆる現代もののミステリーだと思っていたのですが、ギリシャ神話に出てくるハルピュイアのようなもので出現するに及んでこれはファンタジーものだと理解しました。結構楽しそうな気がします。
2024/10/30
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
サイバーパトロールをする企業でバイトを始めた孝太郎。全国各地で起こり始めた死体の指を切断するという猟奇的な連続殺人事件。一方、孝太郎の周辺でも起こる謎の事件。冒頭からぐいぐいと引っ張っていく力はさすが。宮部みゆきは「社会派ミステリー」が一番面白いと思うのだが……、なんとなく違う方に展開してないか………。ちょっと不安を感じながらも中巻に進む。
2018/02/25
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