煉獄の使徒〈下〉 (新潮文庫)
煉獄の使徒〈下〉 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
下巻も800ページ超。大作である。しかも、ひじょうに優れたヴァイオレンス・ノワール小説だ。小説の全体は一貫して二層構造を取る。すなわち、警察機構のノワールと隠されたヴァイオレンス、そして教団においては、妄想を限りなく膨らませてゆく教祖と、それに盲目的に従ってゆく信徒たちのノワールとあからさまなヴァイオレンスと。それを描いてゆく馳星周の筆力は迫真力に満ちている。とりわけ「ポア」の場面のそれは、息詰まるを超えて息苦しくなるほどだ。あらゆる組織が、その本質において抱え込まざるを得ない闇を見事に描き出したと思う。
2018/11/06
巨峰
ノンフィクションを装いながらも一気にフィクションに走る力技が凄い。最後には警察庁長官狙撃事件の1つの解も提示。しかし、現実の事件は小説よりもっと酷く、教団が起こした事件は、この十倍はある。この小説のように、教団に疑問を抱いた幹部ももっと少ないのではないだろうか。
2021/08/30
Tetchy
この狂気のテロ集団の物語はオウム真理教がモデルになっている。もしかしたら今ここでさえ、第2のオウム真理教が生まれている可能性がある。この物語は一介の新興宗教がテロ集団になっていくプロセスを語ることで、我々にこのように人間は操作され洗脳されていくことを眼前に示し、警告を促しているようにも思える。しかし物語の結末は何とも消化不良。これはその後のオウム真理教の末路を知っているから、それ以降は書くべきことはないと作者が判断したのかもしれない。この割り切れなさこそ、あの事件そのものを表しているように思えるのだが。
2013/12/16
外枠発走
上下巻合わせて、1600ページ。どんな結末が待っているのだろう。そんな期待がやや裏切られた感がある。ただ、展開的にしょうがないかなという感じ。好き嫌いはあれでも、完成度は高い作品。
2012/01/08
ぱどり
再読。陥れ、陥れられ、拷問し、拷問され、殺し、殺される。 読むのに体力がいります。
2017/06/04
感想・レビューをもっと見る