無情の世界 (新潮文庫 あ 41-3)
無情の世界 (新潮文庫 あ 41-3) / 感想・レビュー
hit4papa
著者の初期の頃の作品は、饒舌がゆえにストーリーを追うのを難しくてしまっているように思います。本作品はそんな中でもわかりやすい短編集で、他の作品のようなアイディティの問題といった明確なテーマを見出すことはできません。収録されている三作品に通底しているものをあえて探し出すとするならば、鬱屈した暴力衝動が発露する瞬間となるでしょうか。『鏖』(みなごろし)は、あり得ない設定の実に暴力的な物語ですが、錯綜していながらもスピート感があり、まとめはスッキリで読みごたえがあります。本作品集のうちではオススメの作品です。
2017/04/29
ちぇけら
終始気絶しっぱなしのような読書だった。「先生」と呼ばれる男のストーキングについての小学校6年生の語りなんて面白すぎるけど、それ以上の言葉にならない。もはや読書中の意識がない。完全に持っていかれる。1つ言えるのは、数々の狂気がつまっているということ、それらは掛け値なしに面白いということ。阿部和重さんの著書はほんとうに感想が難しいよ。
2017/11/12
のせ*まり
いきなり通り魔に金属バッドで頭を殴られて訳もわからないまま、家に帰って、鏡を見たら凄い出血してて、え?!嘘!!ってなったような感覚で読了。小説が持つ熱量も凄いけど、ハイテンションなのに、どこか冷めてる部分も見え隠れして、これが現代文学か!!って衝撃を受けました。作者の最近の本が読みたくて即効買いに行ったよね~この空気感、中島哲也監督にぜひ映像化してもらえたらきっと面白い!!恐るべし、阿部和重、、、
2016/11/13
深沢商店
野間文芸新人賞の作品集とのこと。阿部さんの小説はいくつか読んでいたが、かなりテイストが違うかんじを受けた。3本目の「みなごろし」が特に強烈で、好みとは言えないけれど、とにかくとことんやっちゃっている感。
2014/01/08
スミス市松
小説内における偶然とは必然なのであって、たとえば登場人物が次々に狂気的に連鎖していく『鏖』などは乱暴にいえば伊坂幸太郎っぽいのだけど、凡百の作家が人物の内面や比喩といった小説のたくらみを隠しながら物語を編み込んでいくのに対し、阿部和重はそれらすべてをあけっぴろげてしまう。いわば倒錯したたくらみによって物語の偶然=必然の連鎖をぽきぽきと脱臼させ、読者を情報過多で意味のつかない不確定な場所へ連れて行くのである。この男のプライオリティが何なのかは正直分からないが、そこは妙に風通しがよく、妙に明るく、妙に笑える。
2011/03/23
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