あこがれ (新潮文庫)
あこがれ (新潮文庫) / 感想・レビュー
さてさて
『…今、わたしがいるここは、ここにしかなくて、そしてそれが、ありとあらゆるところで、同時に起きているのだ』。思春期の萌芽を見る小学生のヘガティーと麦がそれぞれの章で主人公となるこの作品。そこには、” 互いのあこがれを支えあい、大人への扉をさがす”二人の小学生の日常が描かれていました。小学生視点で優しく描かれていく物語に次第に入り込んでいくのを感じるこの作品。”寂しさを笑顔で支えあう小学生コンビ”の友情を熱く感じるこの作品。どこまでも柔らかく、やさしく紡がれていく物語。じっくりゆっくり味わいたい物語でした。
2024/02/13
ゴンゾウ@新潮部
麦くんとヘガティちゃん、ふたりの小学生の恋愛未満の友情を描いた物語。お母さんになった川上未映子さんの作品を初めて読みました。登場人物が横文字のニックネームなのでとてもポップな作品ですが、子ども達への優しさが溢れています。優しいだけではなくオトナの事情もちゃんと盛り込まれています。第2章を明け方から読み出したら止まらなくなりました。通勤電車の中で涙を止めるのがしんどかった。ふたりはきっと思いやりのある大人になれるよね。【新潮文庫の100冊 2018】
2018/07/05
のぶ
子どもの感性がよく表されていて素直に感動する事ができた。物語は前後編にわかれ、前半は麦くんが語り手。スーパーの店員であるミス・サンドイッチに麦彦は惹かれるが、ある事件をきっかけに会えなくなってしまう。落ち込む麦くんにヘガティーは声をかける。後半は二年後のヘガティーの視点から物語が進む。ふとしたことから自分に腹違いの姉がいると知り、動揺するヘガティー。麦くんは、その姉に直接会ってみることを提案する。友だち同士の関係がよく書けていて、気持ちがよく伝わって来る。読後の爽やかさに川上さんの筆力を感じた。
2023/04/10
扉のこちら側
2018年299冊め。あだ名のセンスが抜群である。小学6年生。大人顔負けの恋愛模様を繰り広げる子どももいるけれど、性的な香りをさせない男女の幼馴染の表現が秀逸だった。初読の著者であるが漢字のひらき方や文章のリズム感が心地よい。
2018/07/10
NAO
【『愛の週間』】麦彦とヘガティーというあだ名の女の子の小学校生活。自分でも気づかないほどの麦彦の淡い恋心をヘガティーが敏感に察知するのは、彼女が本当は彼にほのかな恋心を感じているからではないだろうか。それでも二人が「つきあっている」にならない友情でつながっていられるのは、小学生という特別な時間だからだろう。ネット上で父の過去を知ったヘガティーの葛藤は、思春期の少女らしい瑞々しさに溢れていて胸が痛くなった。大人の自分はこの作品から懐かしさやほのぼのとしたものを感じるが、同年代の子どもはどう感じるのだろう。
2018/07/27
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