子規の音 (新潮文庫)
子規の音 (新潮文庫) / 感想・レビュー
piro
短いながら濃密な正岡子規の生涯を追った一冊。寂しがり屋で人好き。食いしん坊。自分勝手で図々しい所があっても皆それを受け容れてしまう魅力を持った人。生き生きと描かれた子規の姿にとても親しみを感じました。印象的だったのは芭蕉の足跡を追った東北行。まだ元気だった子規は精力的に歩き、目にした風景を素朴な句に詠みます。この頃の句は今で言う所のインスタの様な印象。替わって病床での句は、タイトルにもある様に音が詠み込まれた句が多い気がします。子規の出棺後、秋山真之が訪れた場面は『坂の上の雲』を思い出しました。
2020/09/28
たま
2017年単行本、2019年文庫。子規の生涯を丁寧にたどった労作。記事、手紙、俳句や歌が時系列で紹介されるだけでなく、転居すれば転居あと、旅行すれば旅行あとを訪ね、友人や門人の消息も伝え、子規とその時代を丸ごと読者に手渡すかのよう。著者の森まゆみさんは、子規の句や歌から子どもの頃聞いた東京の町の音が聞こえると言う。私は東京に詳しくないのでその点が残念。充実した資料と調査に基づくだけでなく、三陸沖地震、日露戦争、男ばかりの交友関係など多くの面で、著者ならではの現代からの視線が随所に光る評伝である。
2021/03/28
tsu55
正岡子規の評伝だが、子規その人のみならず、その周辺の恩人・友人・弟子などにも詳細に触れ、また根岸をはじめとする子規に縁のある土地の様子も生き生きと描写されている。それにしても子規の友人・弟子などに夭折する人が多いのには驚いた。
2019/12/01
てん
正岡子規の評伝。病気になってもなぜか明るく、食欲旺盛で短歌や俳句、旅に猪突猛進といった勢いで向かっていく。東京の地理に疎いので、おそらく地理的に思い入れのある筆者の温度はそのまま感じられなかったかもしれないが、力作。常に周りに人がいたのに、深夜に誰にも看取られずに亡くなった子規の寂しさが際立つ。
2020/10/04
Mark
子規の生涯を間近に感じることができる秀逸な作品だと思う。解像度の高い内容で、彼が生きた当時の東京や、明治維新の記憶も新しい当時の日本も感じることができる。 全身を結核に冒され、床に伏したまま寝がえりさえもままならならず、それでも、句や歌を編み出し続ける明るさが心を打つ。死を間際にした子規が言う、「悟りとは、平気で死ぬことではなく、如何なる場合でも平気で生きていること。」 終焉の地となった根岸の子規庵と、墓所の大龍寺を訪れてみたいと思う。
2020/08/30
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