終の住処 (新潮文庫)
終の住処 (新潮文庫) / 感想・レビュー
新地学@児童書病発動中
芥川賞受賞作。一組の夫婦の生活をねじれた表現で描いている。登場人物たちに存在感がないのが特徴で、主人公には「彼」という言葉が使われ、他の登場人物たちも「妻」や「女」などと表現される。彼と妻の間にはすれ違いが生まれて、十一年間話をしなかったりするが、実際にそんなことが起こるかどうかは疑問だ。社会や経済の動きは極めて現実的に描かれて、捉えどころのない登場人物たちと対照的だ。作者は社会の動きに引きずられて、主体的に生きられない人間を描こうとしたのかもしれない。
2016/07/12
kana
《翌朝、妻は彼と口を利かなかった。次に妻が彼と話したのは、それから十一年後だった》本当にあった怖い話だと思って読むとぞくぞく面白い芥川賞作品。フィクションだけど。始終不機嫌な妻と不倫に依存する旦那との、会話がなくなるまでの危うい結婚生活と互いに口を利かない十一年間と会話が戻ってからの不意に感じる老いと諦めと。夫婦間に折り重なるカサカサした感情だけを取り出すとこうなることもあるのかな、と思わせるリアリティがあります。飛躍する時の流れやぶっきらぼうな文体にラテンアメリカ文学の香りを感じるのは私だけでしょうか。
2017/03/01
けいた@読書中はお静かに
文化の日。敢えて苦手の芥川賞に挑戦。芥川賞の中でもベストセラーなので比較的読みやすいかなと思ったけど、やはり難解。全体的に陰鬱で盛り上がりもなく、妻が急に11年も口をきかなくなった理由もはっきりとせず、突然終わる。文章が美しいわけでもないし、テンポがいいわけでもない。僕が芥川賞受賞作を理解出来る日がくるのだろうか。
2015/11/03
貴
読んでいる間と乾いた『歯車』に似た不思議な感覚を感じました。
2022/09/14
かわちゃん
☆☆☆☆ 賛否両論というより、多分理解できるできない、好みであるない、みたいな評価に分かれやすい本だよなという読後の感想。1人の男の半生が、妻・娘・不倫相手など様々な女性へのエゴイスト的な独白が繰り広げられると思いきや、突如幻想がまぎれたり、男性的な仕事での成功みたいなリアルがまぎれたり、小説としての散文の塊のような本でした。いわゆる読み慣れた小説なるものとは、一線を越える文学なのかな。何回か再読することで、見えてくるものがありそうな気もしております。
2018/04/12
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