晴天の迷いクジラ (新潮文庫)
晴天の迷いクジラ (新潮文庫) / 感想・レビュー
さてさて
『私たちクジラ見に行くんだけど、いっしょに行かない?』そんな言葉の先に、それまでそれぞれに死と対峙していた三人の主人公たちが『クジラを見に行く』という行動を共にしていく様が描かれるこの作品。そこには、三人の主人公それぞれが抱える人生のドラマが丁寧に描かれていました。年代も境遇も全く異なるそれぞれの主人公たちが歩む人生のあまりの閉塞感に鬱屈とした思いに苛まれるこの作品。さまざまなことが起こる人生の中で、私たちは何を大切にすべきなのか?光差すその結末は私たちに一つの大きな示唆を与えてくれた、そんな作品でした。
2023/05/13
hiro
『ふがいない僕は空を見た』『よるのふくらみ』に続いて窪さんの本は3冊目。先に読んだ2冊はともに一章から性描写があり、窪さんといえば、‘性’を描く女性作家というイメージを持ちがちだが、『ふがいない』でも、貧困家庭や助産院を描いて、‘生’もテーマにしている。その窪さん2作目のこの作品では、48歳の女社長、その会社の24歳の男性社員、そして2人と縁のなかった16歳の少女の、迷う3人を通じて、‘生’を正面から描いている。性描写が苦手という方にも安心して読め、少し人生に疲れたときに読むのにピッタリの作品だった。
2014/07/11
にいにい
初窪美澄さん。由人、野乃花、正子の3人それぞれの親子関係、いや、母子関係による子供の絶望感と苦悩の末のほのかな光を鮮明に描いてくれる希望の一冊。母の思い込み(自分の思い通りの子育て、お金への過信、病気への恐怖)を一方的に子供に与える結果がリアルだ。母が居なくても子供は育つのに、母が思い込むと子供は死に向かう。なんで、こんなことになるんだろう?人間とクジラは違う。でも、クジラの自然な生き方が、言うべきことを言う機会を与えることもある。静かな強さを与えてくれた。
2015/03/03
相田うえお
★★★☆☆17017 色々な人間関係がありますが、その中でも家族関係というのは切っても切れない縁だけに簡単には避けられない訳で、小さなすれ違いが積もり積もってどうにもならなくなる前に何か出来ればいいのですが。。2章に入ったら「あら?短編集なのかな?」とか思ったけど上手く話がつながりました。さて話は変わりますが、皆さんは古い温泉旅館や昔ながらの銭湯で、ケロリンと書かれた黄色い洗面器を見た事がありますか?「頭痛にケロリン」ていうやつかな?なんで薬屋が洗面器なんだろ?CM媒体でも何か他にあったろうに。。
2017/02/25
machi☺︎︎゛
それぞれの理由で人生に絶望して、人生を終わらせようとした由人と野々花、正子は死ぬ前に小さな湾に迷い込み海へと出られなくなったクジラを見に行く事に。そのクジラを目の当たりにして3人が感じた思いとは。生きてるだけでいい。死ぬな。という作者の力強いメッセージをダイレクトに感じられる作品だった。また晴天の迷いクジラというタイトルがすごく良かった。
2020/05/18
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