がんこ長屋: 人情時代小説傑作選 (新潮文庫)
がんこ長屋: 人情時代小説傑作選 (新潮文庫) / 感想・レビュー
KAZOO
長屋シリーズの時代小説アンソロジー最後のものです。今回は6作品が収められています。池波、乙川、五味、宇江佐、山本、柴田さんの作品です。それぞれ職人技を得意とする主人公たちの話ですが、どれも甲乙つけがたい感じの作品です。特に私は最初の池波さん、宇江佐さん、五味さんの作品はとてもよかった気がします。印象に残りました。
2016/01/19
じいじ
作者名を見ただけで面白そうな匂いがしてくるアンソロジーだ。六篇どれも独特の味わいで言うことなし。選者の巧さが光ります。面白さの順位は、読み手の好みで決めればよいのではないだろうか。私の好みで選ぶと…。武士の道を捨て陶工に命を懸ける男の人生観と、夫と妻のモノの価値観の違いを丹念に描いた乙川優三郎の【柴の家】と、江戸深川を舞台に、娘おけいと下駄屋の勘当息子との淡い恋路を感動的に描いた宇江佐真理の【下駄屋おけい】の二篇が好きだ。大御所・池波正太郎、五味康佑、山本周五郎、柴田錬三郎は直に味わっていただきたい。
2018/03/04
ふじさん
際立った技と矜持を持った職人を主人公にした短編集。蕎麦切りおそめの多事多難な人生を描いた「蕎麦切りおそめ」、武家の次男新次郎は、すべてを捨て、武家社会から陶工の道を歩みだす「柴の家」、女太夫お由が惚れた勘兵衛は花火造りに打ち込むが…、最後は涙「火術師」、太物屋「伊豆屋」の娘おけいと思いを寄せる下駄屋の倅巳之吉の恋の顛末を描いた「下駄屋おけい」、伝三郎の生き方を通して、ものづくりを超えて、世の真実とはを問う「武家草鞋」、日本一の刀鍛冶を目指した男を待っていた悲劇は…「名人」等。どれも心に染み入る作品。
2023/02/26
アッシュ姉
読友さんおかげで苦手意識を克服しつつある時代小説。大御所作家さんの人情ものが読みたくて、まずはアンソロジーから。優さん以外はお初。以下、ちょこっとレビュー。池波先生=読みやすさに驚く。主人公の奇抜な生き方をもっとみてみたかった。乙川先生=既読の短編だったが、美しい文章にあらためて感嘆。五味先生=解説必見。宇佐江先生=読みやすく親しみやすい。山本先生=素晴らしい。一目惚れならぬ一読み惚れしました。柴田先生=いやはや面白い。もう夢中で読みました。さすがは傑作選だけあってどれも読み応えがあった。
2019/08/30
sin
この世に生を受けてその意味を問いかけるとき怠惰に逃げるか、忘我の境地で何かに打ち込むか…畢竟、人は己の弱さゆえに技を磨くのだろうか?池波:数奇な運命を持った女性の行く末の意外性。乙川:人は己の境遇に満足を知らない。五味:女太夫の生き様と念願成就の際の皮肉な運命が光る。宇江佐:小気味よい恋愛小説。山本:世間を問う前に先ずは己を…という教え。柴田:名人は人を越えようとして人に落ち着く。選者の“がんこ長屋”という名づけは体を表したものではないが、作品の鑑定眼は確かなものでどれも名品といえる作品が軒を並べている。
2017/03/29
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