イラハイ (新潮文庫 さ 34-1)
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イラハイ (新潮文庫 さ 34-1) / 感想・レビュー
さっとる◎
敵を欺くにはまず味方から。一番の味方は、というと自分で、自分を欺きに欺いた結果、嘘から実が出た。ので、私が読んだのは本当に嘘くさい物語、ではなくて、嘘くさい本当の歴史書、だったのかもしれない。物語が終わって、一つの国も終わったが、私は私で、なし得る一切のことを見失った。近くて遠い外国よりは、遠くて遠いイラハイ国のほうが詳しいかもしれない。つぶさにあほらしく、無駄なく無駄。微に入り細に入り徹頭徹尾嘘くさいと、それはもう本当じゃないか。それでいて、冒険が愛のために完遂されるんだから、それはもう物語じゃないか。
2023/06/10
ヒダン
これは面白い問題作だった。すでに『沢蟹まけると意思の力』で免疫をつけてたのでこの愚かしさの物語をけっこう楽しめたと思う。個人的にはやはり文章のリズムとかモリミーに似てる気がする。こっちの方がストーリーを停滞させることに積極的ではあるが。詭弁に翻弄される対話も面白いが、これだけの数の馬鹿馬鹿しいエピソードを思いつくことがすごい。もっとも慎みの穴って雨降ったらどうすんだよというツッコミだけは入れたい。この作品を大賞に選んだファンタジーノベル大賞はなかなかあっぱれ。
2016/09/20
harass
架空の国イラハイの運命を描くファンタジー小説。神話叙事詩昔話などの小説以前の決まり文句や言い回しや前近代的なくどさを全面に押し出してある。マジックリアリズムもあり不条理でナンセンスで悪ふざけのような想像力全開の展開に初めは楽しめたが延々と続いていって絶句。著者の人を喰った顔が浮かんでくる。あっけに取られるほどの執拗さと徹底さには、つっこみを入れる気も失せた。圧倒的な筆力は認めるのだが。これによくファンタジーノベル大賞を与えたものだと審査員を褒めたい。
2014/03/06
K・J
小説って自由だなぁ。伊坂幸太郎さんがものすごい褒めていたので読んで見る。イラハイには女房転がしというのがあって、名前から醸し出される卑猥さは一切無く坂道から夫人を転がす高度な競技で、それにより木にぶつかって女房が死んでから……のような全編に悪ふざけだらけの作品。悪ふざけをしきった英断を評価されたのだろう。確かに伊坂さんが好きそうな作品ではないのかなぁという気がして読んでいた。うん。自由だもんね。ユーモアもあるものね。でも、小説の自由さと楽しさってなかなか両立しないものだなぁ。
2015/02/09
まっ黒大魔王
伊坂幸太郎氏が感銘を受け、絶賛した作品。現在は「絶版もの」なので、手に入れるにはamazonやネットで入手するべきか。「イラハイ」というある王国と、一人の青年のお話。しかし、なんなのだこの作品は。まるで大人向けのおとぎ話だ。独特の言い回しは非常に冗長で、テンポは正直最悪だが、不思議な中毒性のようなものがある。哲学的で、神秘的、且つ奇妙な一貫性のようなものを感じる。おそらく好きになる人はそうそういないのではないか。何はともあれ不思議な作品。
2014/05/07
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