酒仙 (新潮文庫 な 30-1)
酒仙 (新潮文庫 な 30-1) / 感想・レビュー
きき
酒好き必読。気が付くとずっと呑みっぱなしの酒的冒険小説。とりあえず主人公がリアル「酒に溺れて死んでいる」状態(=浴槽にお酒をためて入浴します)から始まる物語、どうかしている。けれどどういう訳だか出てくるお酒も肴も美味しそうだし、酔っ払っている姿が読んでいて心地よくて羨ましくなってきてしまう。邪心で呑んではいけない、呑むなら全力で酔え、と言わんばかりの全力感。清々しい位大量に溢れる文中のアルコール量…読みながら酔っ払いそうになる、新しい読書体験でした。
2021/02/18
ネムル
「お酒のあるところはどこでも仙界とつながっていますよ」仙人に命を救われた飲兵衛が、邪悪な魔酒で世界を覆うとする悪徳酒造業者を阻止する、という話の流れは割とどうでもよくてw実際は、中華料理屋やショットバーの美酒でへべれけになって、店の秩序を乱すワルモノを懲らしめるという、実に抱腹絶倒でナンセンス、終始お祭り状態。特に素晴らしいのは、珍味酒肴や様々な古典文学をパロったネタや飲酒詩の数々が凝りまくりで、実に美味しい。優れた小説かどうかよりも、単純に好きかどうかで読者の記憶に残るであろう作品だ
2013/12/12
三柴ゆよし
飲兵衛小説。文字通り酒に溺れて羽化登仙した主人公・暮葉左近(徳利真人)が、仙界・人界の美酒と珍味を堪能しまくる、という序盤の展開は、吉田健一のエッセイや、倉橋由美子『酔郷譚』を髣髴させるものだけれど、いつの間にやら物語は急転直下、幻の聖杯(と徳利)をめぐり、酒飲みたちの熱き魂がぶつかりあう、「スーパー飲兵衛大戦」へと様変わりするのであった。酒にまつわる蘊蓄が惜しげもなく披露され、『ルバイヤート』から李白、中国神仙伝から『神州纐纈城』まで、古今東西の文学作品へのオマージュがひしめく、これは怪作。
2011/05/13
roku7777
なんとも人を喰った本でないか。作者の博覧強記に驚く。まず作者がその博覧をどんどん「無駄」にしていくのが楽しい。そう、無駄なんだよ。このどうでもいい展開の中でひたすら知識が蕩尽される。これ酒にも似ているかもしれないね。酒を飲むという行為が所詮、「無駄遣い」だからなぁ。その点でもこの本は愉快。僕は讀んでいてなんともニヤリ。とくに中華に対する知識はシャッポを脱ぐしかないだろう。しかしなぜファンタジーノベル大賞はこうも「変」な本ばかりなんだろうなぁ。
2017/12/27
Mark.jr
酒星の印を帯び酒飲み修行に明けくれる暮葉左近が妖怪変化や邪悪な魔酒を広める酒蔵と渡り歩く、酒が全ての中心を司っている作品。水木しげる作品にも通ずる朴訥とした雰囲気もさることながら、ルバイヤートから李白まで引用が多用される、知的な遊び心が洒落ています。
2024/06/04
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