鎖(上) (新潮文庫)
鎖(上) (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
音道貴子刑事シリーズの第3段。これまで(とりわけ第1回)は、攻めの貴子だったが、今回は徹底して守勢の貴子だ。しかも、上巻では半ばを過ぎるまでいたって地味な捜査が続く。現実の警察の捜査とは、ほとんどが無駄に終わる、そうしたものなのだろう。半ば過ぎで急転直下、物語は大きく動くが、このあたりは現実のリアルと物語的なリアルトが巧みに交錯して行くところか。乃南アサの巧みなところは、弛緩と高揚の兼ね合いの妙でもある。 なお、表題の意味は後半で明らかになる。ただ、このあたりはルメートルの手法に似ていなくもないが。
2020/02/08
修一朗
「凍える牙」に続いて猟奇的な惨殺事件で始まる、これまた犯人にたどり着くまでが実に波乱万丈なサスペンスだ。バディを組んだ星野がまぁ使命感のかけらもない奴で、なんでこんな警察官がいるんだあっこれはそういういいかげんな奴と熱血音道刑事との闘いがテーマなのね,面白いけど「鎖」関係ないじゃん…て思っていたところが,急展開! ハラハラドキドキが止まらない。それにしても音道さんが吐露する不安と葛藤は等身大で,作中ずぅっと続く心象描写が真に迫っていてたまらんです。ぞくぞくしながら下巻へ…
2016/08/07
yoshida
音道貴子刑事シリーズ第三作。拝み屋夫婦と信者夫婦が一度に殺害される。音道は本庁の星野と組み捜査にあたる。星野が幼稚な人物であり、本庁でも有名だった。公私混同甚だしく捜査もまともにせず。音道に袖にされ遂にはお互い単独捜査を命じる。単独捜査を余儀なくされた音道は薬を盛られ監禁される。上巻では星野の残念な人物に落胆する。単独捜査を強制されてからの急展開に一気に引き込まれる。展開の緩急のつけ方が巧みで読ませる。保身で嘘をつく星野。音道を探す捜査本部に加わるかつての相棒滝沢。音道の救出と事件の解決に向け物語が動く。
2020/07/18
タックン
再読の音道シリーズ。始めはなかなか読みにくくて進まなかったけど途中から面白い展開になりどんどん進んだな。乃南さんはやっぱ心理描写が巧で凄い・・・あの最悪な相棒の星野さえもうまく料理してる。その星野のせいで音道がピンチに・・・。やっぱ題名でほとんどのネタがばれてしまうのが残念かなあ?滝沢さん登場で後半の大活躍が楽しみだな。今回のテーマはやっぱ銀行の架空名義・架空口座。
2014/08/28
はらぺこ
続編の『未練』は既読。 イライラしっぱなしの前半からハラハラしっぱなしの後半、読んでて全く飽きなかった。あと丸々下巻が残ってんのに音道は大丈夫なんかなぁ。 星野が嫌な奴やから滝沢達の言葉が余計にグッとくる。
2012/12/17
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