ASIAN JAPANESE 1 (新潮文庫 こ 31-1)
ASIAN JAPANESE 1 (新潮文庫 こ 31-1) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
まずは写真家としての小林紀晴。表紙の写真に見られるように、戸外で写しているにもいるにもかかわらず、背景が暗く中心の人物だけにスポットライトが当たったかのようなポートレイトが彼の持ち味。他の人物写真も概ねこうしたタッチ。それぞれが固有のドラマを背負っているかのようだ。文章もまたいい。写真家自身が定職を捨てて、アジアを放浪しているといったデラシネ感が、被写体である彼らの心を開くのだろうか。彼らの全てが「ここでないどこか」を求めているのだろう。そして、そんな場所などはどこにもないことをみんなが知っているのだ。
2017/03/18
伊之助
仕事を辞めてアジアの旅に出る作者。この本は、そのアジアをやはり旅する日本人の若者の群像。旅先の現地の人々と接することはその国の文化や風習を知ることだろうが、あえてその体験に重きをおいていない。現地の人々は日常の生活者だから。作者の視線は、あくまで旅する日本人にある。それは旅するということを、またその意味を考えたかったからなのだろう。若者たちは、なぜ日常を捨てて異国へと旅に出たのか。旅の途中で遭遇する彼らは、驚くほど自らを深く見つめていた。彼らの話を通して、作者もまた自らの旅の意味を、自身を見つめ返す。
2015/10/29
rokubrain
日本を飛び出してインドやタイなど放浪する若者たちのルポとその数年後の彼ら彼女たちの軌跡。 旅は人生のシミュレーションと小林さんは表現する。 旅は人生、とだけでなく、シミュレーションが入ることによって、言葉に熱を帯びた。 皆、管理された日本社会のシステムから本当の自分を取り戻そうともがいている。 小林さん自身もカメラマンとして入社した新聞社をやめて、人生のシミュレーションをした旅だったようだ。 ファインダー越しのフレームの中に見る彼ら彼女らの姿と自分の想いを重ねようとしているようにみえた。
2023/06/14
出世八五郎
数ある幸せのうちのひとつ・・・道はひとつじゃないー♪ブラーボ♪
Kazyury
旅先で出会った旅人(日本人)との現地でのエピソードと、その後日本で再会した時のエピソードの二本立ての構成。 前半部の現地エピソードのみでは、厨二病を拗らせてしまったと感じなくもない言辞が些か鼻につくところもあるけれども、後半部の様々な「その後」が本書全体の奥行きを与えている。 一時、著者の嫌いな日本では「自分探し」なる言葉を揶揄する風潮もはやっていたけど、旅を実践した彼ら自身の経験を他者が否定することはできない。 まぁ、囚われている大人たち(自分含めて)には眩しいところがあるのかもね。
2017/04/13
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