欲望 (新潮文庫)
欲望 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
電車の中では読むのが憚られるような、ダイレクトかつ煽情的なタイトル。しかし、中味はいたって真摯に向き合った純文学色の濃い作品。タイトルの「欲望」を、解説で池上冬樹氏は「女性の官能の世界」としているが、むしろ、行きつくところのない正巳のそれを表象していると見るべきではないか。本書はまた三島文学への限りないオマージュでもある。『音楽』、『禁色』、『仮面の告白』、『春の雪』、『金閣寺』。そしてエンディングは『天人五衰』への見事なパスティーシュで幕を閉じる。三島の最期と物語の集結が見事に呼応する。
2018/08/20
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
これはまた、凄いものを読んでしまった。心惹かれた男が性的不能者だった。そうでない者には分からない、拭いがたい絶望がそこにはあった。ただ、女は肉体的な欲望に溺れながらも、一方でそこに精神的な交合を見いだす。『恋』で著者の世界観にはまり込み、本書では更に切なくも激しく、性と愛、そして死というものを深化させた小池文学を堪能。肉欲としての性器の繋がりと精神だけの繋がり、眩しいばかりの夏の日の光に溢れた情景描写とその先にあった死。これらの対比に心を揺さぶられながら、恍惚のうちに書を閉じた。貴重な文学作品だと思う。
2021/03/22
bunmei
三島由紀夫邸と寸分違わずに模写した奇妙な袴田邸に、運命に導かれるように、かつての同級生である袴田の妻となった阿佐緒、図書館司書の類子、当時も今も美青年の植木職人の正巳の3人が集う。袴田邸を中心にして再会し、切なくも、どうにもならない性の迷路へと迷い込んだ3人。そしてその結末とは・・・?題名の通り、ちょっと過激で、悲しい、大人のラブ・ストーリーです。但し、非現実的な世界観で、共感したり、同化したりするところは少ない恋愛小説でした。
2018/11/12
遥かなる想い
本の装丁がひどく卑猥に見え、なぜか恥ずかしかった記憶がある。設定は かなり三島由紀夫を意識したもの。
2010/06/26
kaizen@名古屋de朝活読書会
三島由紀夫の話題が全編の下敷きになっている。 著者の三島由紀夫に対する、あこがれと一つの回答になっている。 登場人物が、著者の三島由紀夫に対する回答の道具になっているかもしれない。 次々に亡くなっていく知人達。 生き残った主人公の思いが不透明。
2013/01/14
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