蜜月 (新潮文庫)
蜜月 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
天才画家、辻堂環をめぐる6人の女性たちのそれぞれの「蜜月」の物語というやや珍しい構成をとる。それはちょうど輝く太陽(環は天才かつとてつもない美貌の持ち主である)の周りを回る惑星に例えられようか。したがって、恋物語でありながら、多分に一方向的であり、とうとう最後までインタラクティブな恋にはなり得ない。良くも悪くも、それが本書の特質である。描かれているのは、環を触媒として触れた時に思いがけずも喚起してくる女たちそれぞれが潜在的に持っていた情念だろう。
2020/03/10
kaizen@名古屋de朝活読書会
2枚目,辻堂薫の息子,辻堂環(たまき)の死亡の知らせに対する様々な反応を示す小説。主人公は女性の短編6話。 それぞれを辻堂環の短編小説として,あるいは6つの話で1つの話と考えることもできる。 小説新潮に1996年から1998年に掲載。 画家とのこと。テレビの司会,美術書「十七世紀フランス絵画に見る私的情景」の本の中身が出て来ないのは残念。
2012/12/14
masa@レビューお休み中
あなたは、かつて愛した男がこの世からいなくなったと知ったらどうしますか?驚くのでしょうか。悲しむのでしょうか。嗚咽をもって涙するのでしょうか…。ここには一人の男を愛した6人の女が登場します。彼女たちは新聞で、テレビのニュースで、週刊誌で画家である辻堂環の訃報を知ることとなります。彼と彼女たちの過去の恋の物語が繰り広げられる。それは、夢のようでいて、夢よりも残酷な現実があるのです。何かから逃げるように、生きることを急くように、甘美な恋と痛みと激しい愛と哀しみが交錯していくのです。
2016/12/20
あつひめ
生まれ持った小悪魔のような男だったんだなぁ。環って…。騙そうとかそういうのではなく、本当に心の動きに正直に従う男。環の死によって心の奥に秘めていた想い出の箱を開ける女たち。そのキュンというかチリチリっていうか、環を思い出すことで熱く熟れた気持ちを思い出しているところが切なくもなる。誰にでも想い出はある。大事にしまっておきたいものもあれば、即刻焼却したいものも。でも、6人の女たちはちゃんと愛されたことを知っている。それが羨ましくもある。あー、小池ワールドこれだからまた読みたくなるんだよな。
2014/06/19
ミカママ
小池さんの恋愛小説集なのに、そして大好きな連作短編なのに、これは心に沁みてこなかった(>_<) 主人公の環にも、彼と一時は熱烈な恋をしながらも、今では平凡な日常を送っている女性たちの誰一人にも、共感できなかった。なぜかと考えたんだけど、私はやはり、環のような自堕落で奔放な男性が嫌いだから、なんだと思う。そしてそんな男性に割と安易に恋に落ちてしまう女性たちもイヤ。残念でした。
2015/02/15
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