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恋 (新潮文庫)

恋 (新潮文庫)

恋 (新潮文庫)

作家
小池真理子
出版社
新潮社
発売日
2002-12-25
ISBN
9784101440163
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恋 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

1972年、連合赤軍の浅間山荘事件の陰で、同じ日に密やかに起こった猟銃射殺事件。それは一つの時代の終わりであるとともに、矢野布美子にとっては幻想の終わりであり、事実上の人生の終わりだった。この物語は矢野布美子に捧げられた挽歌である。物語の全体は強く時代性を帯びているが、同時に普遍化もまた図られていた。布美子とムルソーを重ねるところがまさにそうだ。カミュもまた時代の空気を濃密に漂わせているのだが。布美子の葬儀に始まり、マルメロの香りで閉じられる物語の構成は実に巧みだ。また物語の全篇を貫く抒情も味わい深い。

2015/07/22

遥かなる想い

「連合赤軍が浅間山荘事件を起こし…」という紹介は、はっきり言って反則である。この時代を少しでも体験した人であれば、読んでしまう魔力のようなものを持っている。本作品で直木賞を受賞したようだが、小池真理子の特異な世界である美の三角関係を見事に結実させた作品だと思う。

2010/06/26

青乃108号

冒頭1人の女が死ぬ。時は遡り1972年。浅間山荘事件が終結した日、同じ軽井沢。猟銃で1人の男を射殺、さらに妻を守ろうとした夫に重症を追わせた女。時は戻り、死の間際に彼女が語り始めた物語はある夫妻と女が知り合う事から始まる。夫妻の自堕落な性的放蕩ぶりにいつしか女も魅了され2人から離れられなくなり、そうした3人の奇妙な関係はいつまでも続くと思われたが、突如現れたもう1人の男に妻が惹かれ破綻が始まる。その後の物語は激流のように、女による猟銃殺人ただその一点に向かって突き進む。女が哀れみを誘う渾身の力作である。

2023/03/24

風眠

十何年ぶりに再読。年を重ねた分、初めて読んだ時よりも深くこの物語を味わえた。阿刀田高のあとがきのタイトル「『恋』に恋して」、布美子が経験した三角関係を表すのにこれ以上の言葉は無い。背徳と倒錯、奔放とモラル、そして優越感。重大な秘密を抱えている片瀬教授と雛子夫妻。学生だった布美子は不道徳で甘美な秘密を夫妻と共有する。布美子の想いは恋ではないと思う。秘密を独占したいという子供っぽい熱情が見せた夢。けれど真剣なのだ。空虚な夢だからこそのめり込むのだ。軽井沢の風景描写の美しさと官能と絶望。残酷だけれど美しい物語。

2015/01/14

takaC

これぞ『恋』。今まで小池真理子の小説に関心を示さなかった自分のブックセンサーを恥じ入りたい。

2018/01/30

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