浪漫的恋愛 (新潮文庫)
浪漫的恋愛 (新潮文庫) / 感想・レビュー
じいじ
小林秀雄自著の一節「小説の魅力は、自分を忘れ小説中の人物になり恋愛して、楽しむ…」を借りて、存分に満喫しました。主人公千津(46歳)が愛した建築家倉田柊介(49歳)に身を任せて不倫の恋に浸りました。柊介と同年代の仕事に燃えたころに遡って読んでみた。不倫だけに千津の夫への小波が頭を掠めましたが、柊介の千津を求めるひた向きな恋情は理解できます。夫への罪悪感に苛まれながらも、自分の意志を貫く純粋な千津に愛しい魅力を感じます。小池真理子の激しく狂おしい大人の恋愛小説を、自分を忘れて堪能しました。
2018/07/21
優希
禁断の恋の故の母の自殺の記憶に囚われていながらも、恋するときは恋するものなのだと思わされました。身も心も灼きつくような激しい恋。記憶も年齢も拭い去るように狂気にも見える恋に堕ちていく姿は静かな激情そのものに見えます。危ないと思えるほどの甘美で美しい文章に酔いました。
2018/01/09
らすかる
月の光を浴びて狂っていくような、道ならぬ恋。身も心もすり減らしてなお、求め合うような狂気じみた恋をしてゆく3人の女たち。主人公の千津は不倫の果て自殺した母のようになるまいと必死ながらも妻子ある男性に溺れてゆく。それがまた50手前の男女なんだな!千津も若くない自分がいい歳して恋をしてることを恥じている。でもきっと年齢なんて関係なく、くるときはくる!きてしまったらのまれてしまうのかもしれない。千鶴の気持ちも、千津に夫を奪われた倫子の気持ちもわかる気がする。一生に一度の恋。うらやましいです!
2020/07/02
カナン
表題は「月狂ひ」のままの方が良かったのではないだろうか。失礼ながら何故このような陳腐なものに変更したのかが理解出来ず。頂き物ですが、個人的には女の欲深さや浅ましさ、男よりも後にピークを迎える性欲、何より恋という毒薬を飲み「女」以上に「雌」としての面を剥き出しにした作品は好みでなく、軽蔑や侮蔑の目で読んでしまうので、読後感は非常に悪い。しかしただ一点、「男から向けられた熱情を上回るほど、男を愛してはならない」という一行は満足した。不倫はしたければすればいいけど、美化して己に酔いしれてる女は正しく「月狂ひ」。
2015/10/26
ロマンチッカーnao
ロマンと書かずに浪漫と書く。まさにその文字がピッタリ。私は確かに生きたのだ。46歳の千津が49歳の柊介のとの恋を終わらせた時の気持ち。年老いて、死んでいく、すべてのものが夢幻の如くに感じられるようになっても、柊介との恋だけは、本物であり、生きた証となる。本物の恋とはそういうものなんですね。医師に恋をし、心を病んで自殺した千津の母の話、作中に登場する『月狂い』という夫の居る身でありながら、若い絵描きに恋をして悲劇的な結末を迎えす美的で浪漫的な小説。この二つの話が、二人に影を落としつ迎えるラストは感動でした。
2020/02/06
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