無伴奏 (新潮文庫)
無伴奏 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
小説の手法からすれば、本書は恋愛ミステリーである。主人公、響子の猜疑や嫉妬を軸に物語は展開し、やがて響子にとっては思いがけない(ほとんどの読者は、発端のあたりから事の真相に気づいていたと思われるが)事実が明らかとなり、そして事件へと展開してゆく。これら一連の出来事を20年後に回想するという構成。小池真理子さんにとって思い出深い、1969年の仙台の街が舞台だ。嵯峨露府などが鏤められるが、著者が思うほどには、風土と時代の空気感はやや乏しい。今との決定的な違いは、ゲイに対する本人と社会の認知だろう。
2018/12/08
ろくせい@やまもとかねよし
学生運動に参加する女子高生を主人公とし、1960年代の若者が感じた掴み所がない社会や自己を描く作品か。主題は人間の性である。期待される人間意識の上で構築される精神的な性と生物として発する肉体的な性の分離を考察しているのだろうか。しかし、描かれる当時の自由や平等上の個人主義を尊重する雰囲気が強く背景に組み込まれており、現在との違和感を拭えない。ただ、時代はともかく若者が死を近くに置きながら、彼らなりに熟考する姿勢は尊くそして切なく感じた。
2018/06/01
kaizen@名古屋de朝活読書会
「無伴奏」曲名ではなく店の名前。仙台にあった音楽喫茶。バロック音楽専門喫茶。音楽の題材。ローリングストーンズの「アズティアーズゴーバイ」「勝利を我等に」ビートルズ「ヘイジュード」パッヘルベル「カノン」ジェームズブラウン「マンズマンズワールド」ラフマニノフピアノ協奏曲チャイコフスキー「悲愴」「受験生ブルース」プロコルハルム「青い影」マルウォルドロン「レフトアローン」バッハ「平均律」「アダージョ」ダイアナロス,シュプリームス「ラブチャイルド」バッハ「ブランデンブルク協奏曲」曲をかけながら読むのもよいかも。
2012/10/14
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
後の『恋』『欲望』へと繋がっていく、恋愛ミステリー作品。学生運動が吹き荒れた60年代後半の仙台という時代設定は今の時代には無いものへの興味がそそられて良かったのですが、どうにも不自然で時代がかった(ちょっと言い過ぎ😜)男性の台詞まわしにはどうしても馴染めず💦前に読んだ『恋』は良かったので、少し時間をおいて残りの『欲望』にも挑戦してみようと思っています😊
2019/02/17
優希
初恋と処女喪失というテーマがとてもヒリヒリしました。女子高生という多感な時期に渉と出会い、惹かれ、翻弄される中で悲劇へと投げ込まれていくのが何とも言えない思いにさせられます。渉の友人・祐之介とその恋人・エマ、そして渉の共有する秘密が不安な四角関係を生み出しているようで、暗闇の中を模索している気分に陥りました。濃密な性の香り、甘美な死への誘惑。恋というミステリアスな世界に引き込む恋愛小説だと思います。
2016/06/26
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