無花果の森 (新潮文庫)
無花果の森 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
主人公の泉は、小池真理子さんの小説のヒロインとしては随分地味な上に、薄幸な印象のつきまとう女性である。物語の舞台もまた岐阜県大崖市(架空であるが大垣市がモデルと想定される)と、これまたきわめて地味である。ゲイのサクラこそは幾分個性的ではあるものの、それも常識の範囲を越えるものではない。プロットもまた起伏には乏しい。なんだか地味尽くしの小説なのである。結末もそこそこにはドラマティックではあるものの、やや物足りないか。ただ、小説は玄人受けがするようで、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞している。
2019/04/25
らむり
DVから逃げる女と冤罪から逃げる男の、偶然から始まる恋愛サスペンスです。先が気になって物語に引き込まれましたが、著者近影写真にも引き込まれました^^;
2014/07/09
鍵ちゃん
小雨の降りしきる午後、夫の暴力に耐えきれなくなった新谷泉は、家を飛び出した。隠れ場所を捜し、ごくありふれた地方都市に降り立った彼女は、狷介な高齢の女性画家に家政婦として雇われることになる。降り続く雨の中、時間だけが静かに流れゆく日々を過ごす泉は、思いがけない人物と出会う。今までこの作家さんに作品の中では、一番かもしれない。追い詰められた男女の大人の恋、いいね。今までの過去を精算して一から二人力合わせて幸せになってほしい。そしてさくらさんも。
2023/10/14
シュラフ
逃亡生活というテーマを小池真理子らしく書ききっている。DV亭主の暴力から逃れて新谷泉は岐阜大崖にたどり着く。そこで高齢の女性画家とスナックのおかまのマスター、そして恋におちいることになる鉄治との奇妙な生活がはじまる。泉と鉄治は逃亡者なのだが、実は女性画家の八重子もおかまのサクラも精神的には世の中から逃げた人のように思える。だからこそ泉と鉄治にこんなにも優しいのではなかろうか。鉄治の自首によってふたりの恋が終わってしまわないかと心配したのだが、ラストの八重子の葬式の場面でのふたりの再出発の抱擁はさわやか。
2015/07/31
ヒロ姐
小池真理子の流れる様な文が大好きなので一気に読了。DVの恐怖から逃げ辿り着いた寂れ切った街。蒸し暑くべったり降り続く雨。忌々しい過去と悪夢。偏屈な画家と奇妙なオカマ。再会し恋に落ちる記者。外から見えないように隠して花を咲かせる無花果と同じく因果を秘める泉。これぞ私が愛する小池ワールド!
2014/06/26
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