幻世(まぼろよ)の祈り―家族狩り〈第1部〉 (新潮文庫)
幻世(まぼろよ)の祈り―家族狩り〈第1部〉 (新潮文庫) / 感想・レビュー
遥かなる想い
ドラマ化に伴い、再読。 天童荒太が描く世界は 苛酷で、誰もが触れたくない、 そんなテーマが多いが、この本も 子供への虐待を軸に、『家族』のあり方を 問う。ドラマでは松雪泰子の イメージが強すぎる氷室游子が 原作でも松雪さんになってしまうのが、 奇妙に面白い。馬見原刑事が 護ろうとする綾女親子の家族の 幸せへの祈りも痛々しい。
2014/08/12
抹茶モナカ
山本周五郎賞受賞作を文庫化にあたり、新しい作品として書き直した長編の第1部。社会問題が大胆に書き込まれていて、社会の最小単位「家族」のうちの弱者である児童に対する虐待への言及が目立った。精神病院入院経験者である僕にとっては、馬見原の奥さんの佐和子についての筆致に目が行ってしまったが合格点。精神病患者についても、良く書けていると思った。
2014/06/24
修一朗
何年もずっと積ん読しておいたら、ドラマ始まっちゃいました。ほっとく方がもちろん悪いんです。こんな重量級小説をよくドラマ化したな、と思ったら脚本大石静でした。ドラマ見ようという気になり、それじゃ原作読もうかということで着手。天童荒太だし重たいに決まってるし文章は容赦ないだろうし気合がいるだろうなとは思いましたけど。第1部は、各人の群像劇からスタート。登場人物誰もが事情を抱えている。社会派小説だと思っていたのでミステリー要素がこれほど入っているとは思わず。事件発生!続く…というサスペンスドラマ風で第2部へ。
2014/08/14
かみぶくろ
親は子を虐待し、子は親を殺す。傷つけ合う家族の姿が、殺伐とした社会や世界の傷つけ合いの縮図として、濃密に描かれる。崩壊した家族ばかりでないと、自分の家族と線引きをしようとするその姿勢も含めて、筆者は容赦なく、あなたの家族は本当に大丈夫なのかと詰め寄ってくる。五部作の第一部だが、世界観の提示と、これから起こる痛ましい悲劇の連鎖を想起させる、抜群の導入だと思う。
2020/04/18
*すずらん*
現世のあらゆる問題が人によって作られ、人によって悩まれるのなら、全ての問題の初まりは家族であり、帰結する場も家族なのではないだろうか。それならば正常な家族はどこにあるというのだろう。助け合い愛に溢れた家族なんて、どこにもない。人が共に生きていく上で、傷付いたり怒りを感じない事などない。親ならば子供ならば、必ず愛情を持てる訳ではない。日々のニュースがそれを物語っている。家族なんて儚くて脆くて幻の様な物。だからこそ、願う。本物の愛を見てみたいと。ここにないからこそ見せてほしいのだと、私達はただ神に祈るしかない
2014/06/14
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