不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か (新潮文庫)
不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
米原万里さんの最初のエッセイ。ここでは、シモネタも駄洒落もほとんど見られない。その意味では、彼女の他の著作とは趣きが違っている。通訳業に関するいたって真面目な考察。とはいっても、タイトルに見られるようなエスプリには溢れているし、他の本が不真面目という訳では全くないが。これを読むと、通訳というのは本当にたいへんな仕事。日本語を外国語に、外国語を日本語に置き換えるだけなどというのは、とんでもない誤解だ。日々、是勉強の毎日のようだ。本書にはまた外国語教育に関しても、実体験からの示唆に富む指摘がなされている。
2014/09/26
ミカママ
ああ、そういえば、彼女亡くなったんでしたね。読後に気づきました。私自身(英語ではありますが)子どもの頃から通訳を目標としていまして。今でもプロではないですが、バイト的に通訳の経験は数知れず。(要はハンパな英語屋)それに引き換え、彼女はプロ中のプロ。素人とプロの歴然たる線引きを見せつけられました。そしてこれを書いたご本人が、立派な美人さんであることに、激しく嫉妬(笑)
2015/10/09
Miyoshi Hirotaka
意表をつく題名は、訳文を女の容貌や男に対する忠誠度に喩えるヨーロッパの伝統に由来する。大学でロシア語を学び、商社でロシア貿易担当だった私には縁深い。女史が通訳として活動を開始した時期と私の駆け出し時代、さらにはソ連崩壊という激動が重なる。さらに、本書には、大学の恩師、上司や先輩が実名で登場する。外国語を学ぶことは、自分の中にもう一つの地平線を開くこと。さらに、自国の言葉や文化も外国語という鏡に映すとより鮮やかになる。どの外国語を選ぶかは、運と縁次第だが、文学的な蓄積がある言葉を選んだことは正解だった。
2014/02/19
naoっぴ
とても真面目な通訳エッセイ。なんだけど、言葉の間違い・勘違いというものはどうしてこんなに笑えるのかな。ときにおかんメールにも似た笑いのツボを刺激されたり、ほんの少しのニュアンスで下ネタに変化してしまう可笑しさに思わず大笑い。これらは全て大真面目な現場で起きる出来事だったりするから実際は笑うどころではないのだけれど。この小難しいタイトルも、通訳業の悩ましさを表す秀逸な比喩だ。言語とはその国の文化であり、それを異なる文化をもつ言語に変換することの難しさ、終わりなき奥深さをひしひしと感じた。
2018/11/28
優希
ロシア語通訳者によるエッセイでした。「正確ではないが美しい日本語」か「正しいが言葉にならない日本語」について語っています。通訳の際、知られていない概念があったりする状況が面白かったです。通訳の核となるものを教えられた気分になりました。
2020/06/16
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