魔女の1ダース―正義と常識に冷や水を浴びせる13章 (新潮文庫)
魔女の1ダース―正義と常識に冷や水を浴びせる13章 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
米原万里さん、今回も快調。異文化理解も、これくらい楽しいアプローチで軽快に臨むのがよさそうだ。また、異文化ゆえの誤解も笑えないのだけれど、やっぱり笑ってしまう。しかも、随所にアネクドート(主として政治風刺の小咄)を散りばめたあたりもまたロシア風。ロシア語通訳の第1人者だけあって、知りえた情報も多々あったようで、ガガーリンやテレシコワがいずれも代役だったなんて初めて知ったエピソードも。一番笑えたのは日ソ防衛問題シンポジウムでの出席者紹介「社会主義労働英雄、陸軍大将…シリミエタ同士」だった。シモネッタは健在。
2014/09/12
まーくん
魔女の1ダースは12ではなく13らしい。再読だけど、もう15年以上前のこと。脳細胞劣化のおかげで全く新たな気持ちで読むことができた。著者は幼少期をプラハで育ち、ロシア語で教育を受ける。ソ連邦崩壊の前後から同時通訳者として活躍。その言説も楽しかったが、何といっても一連のエッセイが面白い。正義や常識も視点をずらすことにより、違った世界が見えることを教えてくれる。多くの箴言とともに豊富なシモネタに笑いをこらえるのが辛い。電車で読む時は注意が必要。06年、56歳の若さで亡くなられた。惜しい。もっと読みたかった。
2019/06/02
チョコ
米原万里さんは本当に頭のいい方なんだなぁ。読んでいてどの話も面白い。興味がそそられる語り口は、さすが。山菜の話が忘れられなかったり、所変われば考えが全く変わる話など、住んでみないとわからないような話は本当に興味深かった。彼女の視点から書かれたお話は他のもの面白いはず、読んでみたい。
2023/05/22
天の川
米原さんが亡くなって、もう15年になるけれど、いきいきと異文化を語る米原さんがここにいた。それぞれの地域で育まれた食文化や考え方、己が尺度で評価することの愚かしさを笑いに包みながら説かれ、異文化理解の重要性を考えさせられる。印象に残った言葉。”生まれ育った国を愛するというのは極めて自然な感情で、それをわざわざ大声で主張したり煽ったりするのは、お手軽でいかさまな行為だ。そういった観念操作が人と人との間に障壁を作り出す力は途轍もなく大きい。その障壁を取り除く力が優れた小説や芝居、漫画の中に秘められている。”
2021/09/16
kumicom
通訳って仕事は、実に幅広い知識を必要とするんだなあ、と感心してしまう、多方面からの考察が見事。所変われば、考え方が、食べ物が、思想が、嗜好が、宗教が変わる。自分の常識が他方では非常識。本当に世界は広い。そんな中においても、下ネタに笑ったり、自国の食べ物を褒められるとうれしかったり、万国共通の部分があるのも面白い。人類はやっぱりどこかでつながっているんだなあ。米原さんの作品を読むのは2作目だけど、前回読んだエッセイに続き、特に食べ物にまつわる章か生き生きとしていて好み。あ、山菜そばはもう食べたくない。
2015/11/01
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