カブキの日 (新潮文庫 こ 26-2)
カブキの日 (新潮文庫 こ 26-2) / 感想・レビュー
安南
架空の日本、架空の歌舞伎界を舞台とした胸踊る冒険活劇。琵琶湖畔に建つ劇場へ、霧の中舟に揺られて向かう序幕から、もううっとりと夢の《カブキ》に誘われる。特に内景図 をイメージして設計されたという楽屋の描写が滅法面白い。楽屋口を肛門と見立て、洞窟(消化管)を通り抜けて一階、二階(心臓部?)そして三階へ。そこはいくつもの小部屋が無秩序に連なり、さながら九龍城砦の如き巨大迷宮と化している。歌舞伎という魔物の脳内とは、あらゆるものが巣食う猥雑で魅惑的な混沌の世界なのかもしれない。
2014/10/02
ネムル
舞台は21世紀のカブキ界で琵琶湖畔の船舞台の世界座、ちょっとイカモノ臭のする奇想小説家と思いきやわりと真っ当で、しかし壮大な物語。伝統派と改革派の勢力争いから、藝や伝統形式をめぐる問答、死と生とが背中合わせになった「千と千尋」風に迷宮散歩、そしてグランドフィナーレ。あ、熱い!
2009/09/21
つゆき
小林恭二、初読みです。すごく面白かった。読み始めは多少戸惑ったけど、15ページ目位まで読み進めればあとはもう・・・。「カブキの日」を楽しむだけ。読み手を気持ちよく物語世界へ誘ってくれるので楽に読める。歌舞伎を生で観たことないけれど、特等席で歌舞伎を観てる様な臨場感。もちろん読んでる途中に屋号を声に出したのは言うまでもない。極上のエンタメを読めて大満足。強烈な余韻に身を委ねつつ本を閉じる。
2009/09/14
山下哲実
この作品も長い間、積読本だったヤツです。 パラレルワールドのカブキを描いた物語で 面白かったです。
2022/11/26
ぶんこ
最初から、幻想的なゴンドラのような手漕ぎ船での歌舞伎見物と、お茶屋と出てきて、江戸時代のお話と思い込んでいました。 かなり進んでから、現代の事と知り、びっくり仰天。 世界座3階の摩訶不思議さは、いかにもな感じで、世襲ではない歌舞伎役者の世界感があふれていました。 蕪と月彦が、寺島しのぶさんと菊之助さんを頭に思い浮かべて読んでいたので、蜷川幸雄さんの解説で、お二人のエピソードを知り、なんとなく心が落ち着きました。
2014/02/01
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