沈黙の画布 (新潮文庫 し 38-7)
沈黙の画布 (新潮文庫 し 38-7) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
初出は日本経済新聞での連載。日経ということで、さすがの篠田氏も肩に力が入り過ぎてしまったか。序盤からして説明的で、そのために作家本来の持ち味であるスピード感を欠くことになり、結果的にはサスペンスでありながら緊張感を持ち得なかった。また地方の埋もれた画家という着想はいいのだが、そこに何もかもを持ち込み過ぎて、焦点が曖昧になったことも否めない。画家の妻、智子が物語を支配するが、それもまた主題の分裂に繋がりかねないのである。総合的には篠田作品としては残念だという結論か。
2019/05/23
kaizen@名古屋de朝活読書会
図書館で予約して、届いて、読み始めて、あれ?昔読んだのと似ていると思い、巻末を見ると「薄暮」を改題。解説、教育ジャーナリスト、中教審専門委員品川裕香。ティンガティンガアーティストの話。著者を「切り込み隊長のような表情」と描写。本編は、スライドを見て随筆を書いた作家の話に始まり、画家の周辺に関する話題。詳細は「薄暮」に。http://bit.ly/16Z4cCn
2013/07/07
巨峰
郷土作家と、その妻、支援者たちを巡るミステリアスな物語。篠田節子さんの小説は、先が気になって頁をめくる手が止まらないです。
2012/10/31
James Hayashi
日経新聞連載。地方の無名な画家が残した絵画に、出版社の男が画集の出版に向け動くが、 一筋縄にいかない。夫に先立たれた妻が、画家の残した絵画にこだわり、異様に感じる執念、怨念の様なものを見せる。これが1つのポイントなのだが著者らしいねっとり感。よく調べまとめているとは感じたが、もう一つ盛り上がりに欠ける作品だった。「薄暮」改題。
2017/11/18
RIN
『薄暮』改題。読み始めは「篠田節子っぽさ」があまり感じられず、喩えれば平岩弓枝とか円地文子とか宮尾登美子とか、所謂昭和の女流もののような滑り出し。物故した無名の郷土画家の埋もれた「傑作」を巡る物語かと思いきや、そこはやはり一筋縄ではいかない篠田節子さん。高度経済成長期の東京一極集中と繁栄と対極にあった地方の状況を背景に、「芸術家を取り巻く人々」の様々な貌が興味深く描かれる。人の心が多層的ということを書かせたらこの著者が一番!
2012/08/18
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