額装師の祈り 奥野夏樹のデザインノート (新潮文庫)
額装師の祈り 奥野夏樹のデザインノート (新潮文庫) / 感想・レビュー
ベイマックス
「思い出のとき修理します」は時計屋に持ち込まれた『時』がらみの問題を解決していた。今作は『額縁』作りを通して、5つの短編ごとに謎を解き、全体としての物語として、主人公の額装師の夏樹の婚約者だった弘海のバス事故死の時に謎の行動をしたカレー屋店主の池畠、その池畠に溺れているところを助けられた『くおん堂』次男の純。この3人の心の闇を解き明かしていく。恋愛としては、夏樹と弘海と田代綾香の対応に考えさせられるものがある。
2020/12/22
hirune
その人の過去や傷に関係するものを額装することで、その人の抱える思いに区切りをつけてくれる額装師。額装って平面の絵の印象しかなかったんですが、立体のものでもなんでもできるものなんですね。夏樹、純、池畠の3人とも亡くした人への未練・罪悪感に囚われているけれど、3人が関わり夏樹が額装のために過去の真実を探って明らかにすることによってそれぞれが過去から未来に視線を向けられたのだからいい結末でした。それにしてみんな抱えてるものが重い。。
2021/07/09
たるき( ´ ▽ ` )ノ
不思議な読了感。婚約者の死をきっかけに額装師になった夏樹は、ある目的のために行動している。現実とあの世を行き来しているかのような、まさに臨死体験のような作品。生きていくことは、命を繋いでいくことなのだと語りかけられている気がした。
2021/05/13
ひさか
2018年2月新潮社刊の額を紡ぐひとを改題し、2020年12月新潮文庫nex化。宿り木、小鳥鳴く、毛糸の繭、水底の風景、流星を銀器に入れて、の5つの連作短篇。不思議な依頼と額装師という仕事に、ファンタジー?と思うようなところもありましたが、現実世界のストーリーでした。もつれたような連作で謎が続く長編的展開は、意図したところもあるのでしょうが、わかりにくさが残ります。整理がつくとわりと単純なお話でした。
2021/01/26
泰然
静かに心に染み入る連作短編集。表紙は職人女性の謎解き作品モノを想起させるが内容は真逆。ハンドメイドの西洋額縁制作を媒介にして、人生模様、心の傷、過去の影、再起が静かなタッチで描かれる。事故で婚約者を喪った主人公の夏樹は額装師で、風変わりで様々な依頼が入る。謎めいてストイックな彼女の作る額縁は東欧風でまるで祭壇みたいと評されることで、作品に一貫した物悲しさを与えている。額縁が人のセンシティブな物語を収めて表現する「祭壇」ならば、『額装師の祈り』という題名は優れた暗喩だ。悲しむものは幸いです、とされるが如く。
2021/01/07
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